『質的産業力』東京2位 法大大学院政策創造研究科 坂本教授ら調査

「東京都内の工業力は急速に弱体化している」「トヨタに代表される自動車特化県・愛知は今後、大変なのでは」-。法政大学大学院の研究グループが、四十七都道府県を対象に人や地域にとってどれだけ魅力的な産業空間かを示す「質的産業力」を調査した。東京は二番目の質的産業力を持つというが、その弱点もつまびらかにしている。 (越守丈太郎)


 リポートをまとめたのは、同大学院政策創造研究科の坂本光司教授(新産業創出論)と大学院生十六人。

 公的機関などの統計を基に、「若年人口比率」「完全失業率」「地元就職率」「一人当たり現金給与額」など三十の指標を定めて分析した。評点でランク付けした結果、質的産業力一位は愛知、二位東京、三位静岡となった一方、秋田、沖縄、高知の順に低かった。

 東京の質的産業力をみると、開業率や上場企業比率で評点が最高の十だった半面、廃業率が高く、評点は一。坂本教授は「大阪府ほどではないが、企業倒産率も高く、弱肉強食の街だ」と分析する。また、「大田区で見られるように、工場の上にマンションを建て、本業がどちらかわからない。高地価・高賃金の環境で、工業力が落ちている」と続けた。

 東京は、障害者法定雇用率達成企業比率でも最低だった。総合ランクが一位だった愛知の評点も二。愛知は管理的職業従業者に占める女性比率の評点も五と、十だった東京と比べて低い。坂本教授は「障害者雇用は、強者の両都県が早急にすべき施策」と指摘する。

 坂本教授は従来の弱者救済型で総花的、ハコモノ優先の産業政策を批判する。「地域に大事なのは、企業誘致ではなく、中核的企業の集積だ。個人の起業家率が低い中、今存在して一生懸命やっている企業に、資金を重点投下するべきだ。国や自治体には、処方の間違いに気付いてほしい」と手厳しい。

 来年には全国一万二千四百の商店街から選んだ三十一カ所を研究したリポートを発表する予定だ。坂本教授は「大学院生たちと問題提起し、報告会などで外部と議論し、社会的使命を果たしたい」と意気込んでいる。

◆『便乗リストラ多い』坂本教授
 総務省の「二〇〇七年労働力調査」によると、東京の完全失業率は3・8%で、全国平均を0・1ポイント上回ったが、現実の経済では、学生の内定取り消しや派遣従業員の解雇などが問題となっている。

 坂本教授は「便乗リストラが多い。非正規雇用では、従業員のモチベーションが上がらず、雇用主企業の生産性も上がらない」と警鐘を鳴らす。

 政府が最近まとめた犯罪対策行動計画では、秋葉原での無差別殺傷事件を引き合いに、社会から孤立した若者らを地域・社会参加させる体制が防犯上必要とされている。

 「今の経済は非正規雇用者の犠牲の上に成り立っている。企業は社員を幸せにすることを考えなければ」という坂本教授の指摘は、地域経済だけに当てはまるものではないだろう。

東京新聞 2008年12月29日

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