24時間営業の廃止を考える

毎週金曜日の人を大切にする経営学会のメルマガの巻頭言

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24時間営業の廃止を考える
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              人を大切にする経営学会 事務局支援 坂本 洋介
                    株式会社アタックス コンサルタント

政府は人口や労働力人口が継続して減少している中で、長時間労働・残業など
の悪しき慣習が日本経済の足を引っ張って生産性低下の原因になっていると
考え、最近、働き方改革に積極的な動きを見せている。

実際、2016年8月3日に発足した第3次安倍第2次改造内閣では、働き方改革
担当大臣のポストが新設されたことからも、政府のこの問題に関する本気度
をうかがうことができる。その具体的な実行計画を取りまとめるため、政府は
働き方改革実現会議を開催し、1.長時間労働是正2.同一労働同一賃金の実現
3.高齢者の就労促進4.障がい者やがん患者の労働環境整備などについて検討
を進めている。

その影響もあってか、外食や小売り、百貨店などで、年中無休や24時間営業を
見直すという報道を良く見聞きするようになった。
この流れは、外食を始めとするサービス業の人手不足という要因ももちろん
ある。人手不足が続く中で人員を増やすには、より高い賃金を支払わざるを
得なくなり、そうなれば、いくら深夜まで営業したところで、コストが増え、
採算は取れなくなる。

そこで企業側が「多くのお客様が食事をされるランチタイムやディナータイム
の時間帯に安定したサービスと商品を提供し、社員の働く環境もよくしていく
ため」と効率を考え、これまでの経営環境を見直し、働き方改革の流れに同調
するのもうなずける話である。

その一方で、地方ではまだまだ、24時間営業する外食店・小売店が、深夜の
安全のための拠点になっているから困るという声が少なからず聞かれる。
しかし、街の安全のために深夜営業を続けてほしいというのは、無責任な話
だと考える。その方たちが、治安を守ってくれているので、深夜営業をする
企業の光熱費や人件費を負担しますというならば話は別だが、それもせずに、
24時間営業を続けろというのは無理がある。

今回、私たちが考えるべきは、これまでの24時間営業は、提供していた企業の
過酷な労働環境によって生み出されたものかもしれない、という提供側の
目線を持つことだ。

24時間営業がなくなれば、不便にはなるかもしれない。しかし、考えてほしい
のは、外食店や小売店はもともと24時間営業だったわけではないということだ。
コンビニ大手のセブンイレブンも、その営業時間が朝7時から夜の11時まで
だったことが、店名の由来になっていることからも、それがわかる。

時代の流れや私たちの生活習慣の変化が、24時間営業を生んだのは間違いない。
また24時間営業してくれることで、私たちが得られるメリットがあったことも
また事実である。しかし、私たちがそのメリットを受ける裏側では、常に
24時間営業に悩まされている提供者がいることは忘れてはいけない。私たちは
24時間営業が当たり前ではないということを改めて考えるべきではないだろうか

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