新卒離職率と労働生産性

大学を卒業した新入社員の3年後の離職率は30%と言われています。下表は、主な産業別の離職率と労働生産性を図表化したものです。


確かに全産業の3年後離職率は31.9%でした。一方、産業別では明らかな差異が確認されました。電気・ガス・水道業の8.5%を筆頭とする離職率低位グループと、宿泊・飲食業の50.5%を筆頭とする高位グループが存在します。更に産業別離職率は、労働生産性と明らかな相関関係があることが見て取れます。すなわち、名目労働生産性の高い産業グループの離職率は低く、生産性の低いグループは離職率が高くなっています。

日本生産性本部が実施した2016年度新入社員 秋の意識調査では、「残業が少なく、平日でも自分の時間が持て、趣味などに時間が使える職場」を好むと回答した者が86.3%で過去最高となっています。

小生が調べた飲食業では、社員の月平均所定外労働時間が10.6時間、年間休日116日(2015年実績)。社員の平均年収は平均年齢33.5歳で578万円(2015年実績)。この企業の離職率は全産業計を下回る実績を残しています。

このような実績を残している要素は多々ありますが、ここでは「生産性向上」に絞りご紹介します。この企業では創業以来、徹底した生産性向上に取り組み続け、社員一人当たり粗利額は業界平均を30%以上超えています。この会社の生産性向上への取り組みは、店舗設計・食材調達~店舗作業に至るまで、あらゆる領域を対象としています。

例をあげると、開店前準備作業を解析して掃除機による清掃が最も時間がかかっていたことを割り出 し、掃除機の作業のほとんどをモップで行うように変更。これにより、それまで 1 時間かかっていた掃除時間を 30 分に短縮。また、セントラルキッチンを徹底的に活用できるようにして店舗での調理作業を「盛り付け」や「ソースを和えて加熱」などに単純化させた結果、1 人のスタッフがフロアでもキッチンでも働けるようになり、店内の状況に柔軟に対応できる体制を構築等など。(レストラン分野・コストパフォーマンス№1企業を支える独自の「製造直販」システム ~ サ イ ゼ リ ヤ ~ 公益財団法人 日本生産性本部 生産性総合研究センター2014より引用)

打つ手は無限。毎年数十万人単位で減り続ける我が国の生産年齢人口(15歳~64歳人口)。生産性向上は私たち中小企業経営にかかわる者にとって、重要かつ普遍なテーマの一つです。以上、ご参考まで。

今日も皆さまにとって素晴らしい一日になりますように。

春木清隆

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