就職内定率9割 「最後の1割」争奪戦

リーマンショック前までに戻った模様だ。

就職内定率9割 「最後の1割」争奪戦
2017/9/14 23:56日本経済新聞 電子版

 学生の就職内定率がリーマン・ショック前の水準まで高まっている。9月1日時点で、2018年春卒業予定の大学生・大学院生の内定率は9割を超えた。企業業績の改善や少子化による空前の「売り手市場」で、十分な人数を確保できていない企業もある。中小企業やサービス業などで「最後の1割」を巡る争奪戦が激しくなっている。

 就職支援のディスコ(東京・文京)が14日発表した就職内定率(内々定含む)は91.4%で、昨年10月1日時点の91.2%を上回った。リーマン・ショックの影響が本格化する前の88.9%も上回り、最近の約10年間で最も高い水準だ。

 企業が業績回復や少子高齢化による人手不足で採用意欲を高め、学生にとっては就職先を見つけやすい環境になってきた。だが、人材の獲得競争が厳しくなることで、十分に新卒の採用数を確保できない企業も多い。

 ニチイ学館は新卒総合職の採用が計画に達しておらず、来年の2月まで活動を継続する方針だ。本社での説明会を昨年の5倍の25回に増やすのに加え、地方の支店などでの説明会も同3倍の15回にして学生との接点を広げる。

 同社の人事部は「採用というより学生への営業活動という印象だ」と打ち明ける。「4月入社の作業が間に合うぎりぎりまで活動を続けたい」という。通常、新入社員の内定式は10月だが、この日程にこだわらず採用活動を続ける企業も多い。通所介護(デイサービス)大手のツクイも約100人の採用計画が未達で、9月以後も説明会を開催していく方針だ。

 小売業も従業員を補充する計画を進める。コンビニエンスストアのミニストップは9月中にも首都圏で2回、会社説明会を開催する予定で、まだ内定が出ていない残り1割の学生の獲得をめざす。ゼンショーホールディングスも9月末まで活動を継続。職種別の社員との座談会の回数も増やすなど知恵を絞る。

 学生の認知度が大手より低い中小企業も苦戦が目立つ。リクルートキャリア(東京・千代田)が運営する「就職みらい研究所」の調査では、学生が7月中に内定を得た企業のうち従業員数が100人未満の割合は14%だった。昨年の16.7%より低下したのは、学生の大企業志向が高まっているためだ。

 東京中小企業家同友会(東京・千代田)は、採用のスタートで出遅れた企業で苦戦が目立つと指摘する。一方、大企業とは異なる特徴などを丁寧に説明し、人材の獲得に成功している企業も多いという。

 空前の売り手市場を受け、学生が企業を選ぶ目も厳しくなっている。「1社から内々定をもらっているが、ほかにもいい企業があれば挑戦したい」(就職活動中の東洋大学4年の女子学生)と考える学生も多い。内定後でも、企業も大学生も気を抜けない。

 求人広告を手掛けるプレシャスパートナーズ(東京・新宿)は、選考中の社員面談に加えて内定後の面談の回数を増やし、学生がよく利用する交流サイト(SNS)の活用の幅も広げる。「採用活動は3月末のぎりぎりまで続ける」(ネット系ベンチャーの採用担当者)といった声が多く、まだ攻防は続きそうだ。

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