衛生対策のイカリ消毒株式会社③「人を大切にする経営」

イカリ消毒株式会社の黒澤眞次(まさつぐ)代表取締役会長の話は、その後の経営の話に進みます。(メモ 研究生/中小企業診断士 神原哲也)
 創業期の混乱以降、右肩上がりのイカリ消毒の歴史の中で、数度の大きな危機がありました。1999年にメインバンクのT銀行が経営破綻、さらにはN銀行なども相次ぎ経営破綻した時です。
 黒澤さんは今回、あまり触れていませんが、その後、大きな経営改革を行っているようです。今では現預金が借入金を上回り、実質無借金経営です。千葉県習志野市に今年2月に新設した試験研究機関の「ライフクリエイションスクエア」も借り入れなしで建設した、とのことです。
  また経営の中身を説明するレポートの主題は「心の経営」、副題は「社徳が社格を創る」とあります。話の中で黒澤さんが経営の中でまず触れたのが経営の三大使命でした。
 具体的には、会社の永続性確保、社員の幸せ、足腰の強い盤石な体制、です。これ以外にも「家訓」「肯定人生・夫婦円満の秘訣51か条」「積徳」など理念経営、倫理経営に関係する書き物について触れました。
 その中でイカリ消毒の社員に対する優しさとして坂本教授がまず指摘したのが「準社員」という言葉です。
 坂本教授は、正社員、非正社員という言い方はおかしくて、定期雇用か無期雇用があるだけで、働いている時間が短い短時間労働にも無期がある、と言います。坂本教授が「準社員はそういう社員でしょう」と黒澤さんに訪ねると、「そうです」としたうえで「出産して戻ってきて働いており、3人のお子さんがいる女性もいる」と回答しました。
 もう一つ、坂本教授が「すごい」と指摘したのは、イカリ消毒がGLTD(団体長期障害所得補償保険)へ加入していることです。これは病気やケガなどで働けなくなった時の所得を補償する保険で、同社の場合、会社の保険料負担で給与の40%がもしもの時に支払われます。
 同社は2016年にそれまで60歳までだった補償期間を65歳までに延ばしました。社員個人負担で最大50%の保険料を上乗せ出来るため、ほとんどの社員が給与の90%の所得補償を確保している、と言います。この保険、米国では100人以上の従業員を抱える企業の90%以上が加入しているそうですが、日本では上場会社でも加入率が10%程度にとどまっている、とのことです。
 坂本教授の「日本でいちばん大切にしたい会社」の厳しい基準の上では、まだ課題もありますが、さらなる経営改革で課題を達成していかれるものと期待したいと思います。黒澤会長、黒澤常務 皆様 ありがとうございました。これにて3回の連載を終了します。黒澤眞次 イカリ消毒代表取締役会長

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