日本農業も非価格化でないと存続できない・・

今週は、JAの研修を3日間担当しました。
久しぶりに、研修会場で夜24時、つまり、日付が変わるまでの研修は、昔は、よくありましたが、最近は、こうしたハードな研修は、ほとんどなくなりました。時にはいいものだと感じました。

2019年9月までに全国農業協同組合中央会、いわゆるJA全中が一般社団法人化されることになっています。
TPP反対の封じ込め、安倍政権の言うことを聞かないからといった様々な見方がされていますが、この点の是非については、限られた文章では誤解を生じるといけませんので、控えたいと思います。

全中は、農協法に定めがあり、とはいえ国の機関ではなく(民間である)、国の出資や役員任命がないという「特別の法律により設立される民間法人」と位置づけられます。特別民間法人には、前述の農林中金(農林中央金庫法)や主に中小企業の声を届ける経済団体で日本商工会議所(商工会議所法)も同じです。組織が大きくなり、さらに、世代が変われば、当初の理念からずれていき、組織の維持が目的化することは、組織論的に言えば、必然なのでしょう。当然、組織のプラス面もマイナス面も出てきます。時代や環境が変われば、組織の使命も変わっていかなければならないこともあるでしょう。

組織の議論はさておいて、日本の農業の現状は、大きな課題を抱えています。

日本の農業就業人口はピーク時の1960年と比較すると16%まで縮小し約240万人しかいません。
平均年齢は約66歳。企業の定年にあたる65歳より上の方々が「平均」になってしまっています。(農業従事者の高齢化率6割)農地の約10%近くが耕作放棄地になっています。農家の半分は赤字経営、食料自給率は39%にも関わらず農地は減り続けているのです。一方、人口増により、世界的には、食糧は不足することが予測されています。

なぜ、農業就労が減っているのかは、基本的には利益が出ないからです。
そのため、兼業が増えていき、今では、多くの中小企業の事業継承が30%に落ちているのと同様に、息子娘が農家を継がないといったことが進んでいるからです。
また、日本の農業は、海外との為替にも大きく影響を受け、特に、円高が進んでからは、海外からの輸入農産物との競争にもさらされており、まさに、農業経営の従事者としては厳しい状況です。

食料自給率が低下する大きな要因としては、輸入農産物の方が安いからです。
TPPでも話題になった日本の食文化の象徴ともいわれる「米」ですが、「米」を作って日本の農家が利益が出ているかといえば、一部のブランド米だけで、他の農産物と比べても利益が出ない部類に入ります。

もう一つ、JAに対する批判として、最終的な小売価格の農家が2~3割になってしまっているといったことです。
しかし、意外と知られていないのは、JAのマージンです。わずか約4%で、10割を最終価格として計算すると、多くが流通コストになっているといった構造です。小規模農家が多い中の物流コスト、流通マージンなどが大半なのが現実です。

経営者の中では、こうした中、発達した物流インフラや、インターネット環境を活用し、JAを通すことなく、直接、小売や消費者に届けるといったことも始まっていますが、まだまだ日本全体として考えると限定的です。

日本の農業の方向性としては、決して、アメリカ、カナダなどのように、規模を拡大しての効率農業は難しいのは当然であり、農業先進国と言われるオランダのように、高付加価値化しか道はありません。この点は、JAも気づいていて取り組んでいますが、さらに、力を入れていくことが必要だと思います。まさに、世界市場も視野に入れて取り組んでいくことで、まだまだ、アジアにおいては、進んでいると言われる日本の農業技術を背景に可能性は数多くあります。

突き詰めれば、価格競争といったことに巻き込まれない「非価格化」が、農業に限らず、これからの日本企業の方向性であることは間違いありません。

坂本先生と当時の坂本ゼミ生と一緒に書いた「さらば価格競争」(商業界)は、多くの方に手に取っていただきましたが、まずは、価格競争しないといった覚悟が、赤字化から脱出し、好循環していく第一歩だと思います。

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