流行りの制度を安易に導入することは危険

30年以上、企業経営の現場で、マネジメント手法の移り変わりを見てくると、相変わらず・・・と感じることが少なくありません。

私自身、まだまだ事業意欲はありますが、それは、始めた会社をできるだけ長続きさせたい。何とか、世の中に役に立つ会社に成長させ、バトンタッチしたいと思います。
個人的には、とりわけ有名になりたいといったこともありません。失うものもありませんし、欲しいものもないといったらウソに聞こえるかもしれませんが、実際、正直な気持ちです。ある程度、生活ができればと思っています。

コンサル会社に、22歳で入ってから、26年間、様々な経験をさせてもらったことには、前職に感謝しなければならないと考えています。個人コンサルタントでやっていたら、大企業~中堅中小企業、しかも北海道~沖縄までといった仕事の経験はできなかったと思います。

そして、若い頃は、有名大企業でのコンサル案件の仕事などを担当すると、
「俺自身も、こんな企業でも仕事ができるようになったか・・・」
と正直嬉しかったことを思い出します。しかし、今は、全くそうしたこともなく、後、どの位、仕事ができるかを考えると、価値観の合って頑張っている経営者のお役立ちがしたいと思うのが本音です。また、おかしいことはおかしいと言えるのは、有名企業だとしても、おかしな企業から仕事をもらおうなどと全く考えていないからです。

さて、前職と起業してから合計34年間は、様々なことに気づくことができました。
その一つに、以前、良しとされた手法が、時が経つと色褪せてしまうことです。

今、迷走している人事制度について変遷を振り返って私なりの考え方を伝えたいと思います。

職能資格制度
1985年は、私自身が社会に出た年ですが、安定成長期からバブル経済期で、勤続年数によって、一律に賃金があがる「年功序列制」では、公平な人事評価ができないと日本固有の等級制度といわれる「職能資格制度」の導入が行われていました。社員が保有する能力を等級に分け、従業員を格付けし、昇進・昇格、給与などを決定するシステムです。ただし、賃金体系の基本は年功序列であり、そこに等級ごとの差をわずかに反映する程度でした。

アメリカ型成果主義制度
1991年バブル崩壊後は景気の失速とともに右肩上がりの給与体系、人事制度そのものが見直されました。
象徴的なのは、成果をあげた社員に多額の給与を支給するアメリカ型成果主義が注目され、導入する企業が相次ぎました。また、リストラ・早期退職制度・選抜人事など、余剰人員を削減し、高い業績をあげる人財に経営資源を集中させていきました。

コンピテンシー評価制度
2000年前後、成果をあげている人材の行動や特性を分析・研究することで、優秀な人財を育成しようとする「コンピテンシー」が流行した。しかし、数値目標で管理するアメリカ型の成果主義は、結局日本では成功せず、企業は日本に適合する新たな人事制度を模索することになりました。当時、人事では有名なT大学教授は、成果主義を大絶賛して、風向きが悪くなると手のひらを返したようなことを言うのには驚きます。

役割グレード人事制度他
2000年代は、、グローバル化が一段と加速。国内でも少子高齢化による国内市場の縮小が意識が高まりました。
雇用形態も働く人の価値観も多様化し、役割の大きさと成果を掛け合わせる役割グレード等も試みが行われました。「終身雇用」「年功序列」「企業内組合」などの旧日本型人事制度から、新日本型人事制度が渇望されているが、まだまだ、決定的なものが出ていません。

最近、人事制度関係では、次の二つが頻繁に聞こえるようになりました。

クラウド型絶対評価人事制度
某会社が、クラウド型絶対評価人事制度で大々的にプロモーションを打っていますが、私自身、プロモーションを行っている某会社が、胴元として利益が出るだけで、多くの中小企業に合うとは限らないと思っています。

ノーレイティング
日本企業の多くが「S評価、A評価、B評価、C評価」といったレイティングによる人財評価制度を見直し、敢えて数値や記号による評価を行わない「ノーレイティング」に注目が集まっています。
P&G、マイクロソフトといった有名企業が導入した事例、さらに、日本の有名企業も導入が始まっていますが、その有名企業にも知人がいて多少内情は知っていますが、流行りに流されているような気がします。その他、中小企業でも人事コンサルタントの勧めで、まだ、多くないものの導入する企業もありますが、こうした流行りに安易に乗ることは危険だと感じます。実際、私が古くから知っているノーレーティングを導入した企業ではキーパーソンを始め社員が辞めてしまいました。

「法に背いて、劫に面す」

物事の枝葉ばかり見ていないで、本質を向かうことの重要性を唱える言葉ですが、まず、経営の目的は何か?本質は何か?を、坂本会長が普段から言われるようにしっかりと肝に据えること重要だと思います。

私自身、人事制度は、非常にデリケートですが、

①経営管理の中のサブシステム( システム全体の中で、機能単位に分割されたシステム)であること
②企業それぞれ千差万別であり前提が異なる中、自社の実態にあったオリジナリティーが高いこと

を前提に、流行りの制度に流されずに、独自のものを創り上げることが肝要だと思います。

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