今こそ、問われる障がい者雇用

今週の学会メールマガジンにも寄稿させていただいたが、
重要な問題なので、学会ブログでも、改めて
この問題を取りあげます。

改正障がい者雇用促進法が2018年4月1日より、
民間企業はこれまでの2.0%から2.2%に。
国・地方公共団体等が2.3%から2.5%に。
都道府県等の教育委員会が2.2%から2.4%に、
それぞれ引き上げとなった。

厚生労働省のHPを見ると、
障がい者がごく普通に地域で暮らし、
地域の一員として共に生活できる「共生社会」実現の理念の下、
すべての事業主には、法定雇用率以上の割合で
障がい者を雇用する義務があります。
と書かれている。

このような思いとは裏腹に、今回発覚したのが、
省庁及び地方自治体等の公的機関において、
規定の審査をせず、障がい者として採用し、
法定雇用率を水増ししていた障がい者雇用水増し問題です。

障害者手帳の確認が厚生労働省の通知に記載されていなかった
ことから、各自が自己申告で障がい者に認定するなどの
採用が行われ、その認定も、弱視や健康診断において
異常が確認されたとする職員を障がい者認定していた
というから、呆れるばかりだ。

さらには、その問題を排除した正確な平均雇用率は
2.49%から1.19%にまで下がったというから、
悪意ではなかったという説明を信じろというのも無理な話だ。

本来、障がい者雇用を先頭に立って、旗振り役として
推進していくべき、省庁及び地方自治体等の公的機関が
これでは、わが国の障がい者雇用の促進、
共生社会の実現など、夢のまた夢の話でしかない。

実際、わが国の障がい者雇用の現実を見ると、
平成29年度の調査結果では、
民間企業の雇用障がい者数は49 万5,795.0人、
実雇用率は1.97%でしかなく、
2.0%であった当時の法定雇用率に達していない状況だ。
さらには、法定雇用率を達成した企業の割合も
50.0%とようやく半数に達したというのが真実だ。

ただ、民間企業における障がい者雇用は確実に進んでいる。
事実、雇用障がい者数、実雇用率ともに過去最高を更新している
ことからもそれがわかる。
また前年調査と比較すると、
雇用障がい者数は対前年4.5%(2万1,421.0人)の増加。
実雇用率も対前年比0.05ポイントの上昇。
さらに、法定雇用率達成企業も対前年比1.2ポイントの上昇と、
いずれの数値も増加・上昇していた。

民間企業の障がい者雇用への機運が年々高まっているなかで
起きた今回の問題は、それに水をさす本当に残念な問題だ。
しかし、考えようによっては、障がい者雇用に
より真剣に向き合うチャンスともいえる。

本当に、我々がしなければならないのは、嘘をついてまで
満たさなければならない法定雇用率ではなく、
働く機会を求めている障がい者の夢を実現させることなのである。

現在、応募中の第9回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の
応募資格も含め、これまで下記項目を外していないのは、
その思いの表れなのです。

〇障がい者雇用率は法定雇用率以上であること
 (常勤雇用50人以下の企業で障がい者を雇用していない場合は、
 障がい者就労施設等からの物品やサービス購入等、
 雇用に準ずる取り組みがあること)

人を大切にする経営学会事務局支援スタッフ 坂本洋介

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