株式会社久保田オートパーツ【No49いい会社視察2012/10/22】

今回は2015年3月、「第5回日本でいちばん大切にしたい会社大賞」において審査員特別賞を受賞された『株式会社久保田オートパーツ』さんをご紹介致します。

少し古いですが2012年10月法政大学大学院の坂本先生の授業の一環として数名のメンバーとご訪問させていただいた情報を元にしたお伝えとなります。
当日は久保田 茂代表取締役社長(当時)、久保田 泰規副社長にお話を伺いました。現在は久保田 泰規氏(ご子息)に事業継承をされています。

●概要 http://www.kubotaap.com/
会社名 株式会社久保田オートパーツ
代表者 久保田 泰規
所在地 宮崎県宮崎市細江字板川4231番
創業 1975年4月 久保田自動車解体として久保田茂氏が開業
従業員 50名
資本金 5,000万円
売上額 10億円(2017年12月実績)
主要取引先 宮崎のディーラー、中古車販売業者、自動車整備工場、自動車板金工場、他同業者
事業内容 廃車・中古車の買取り(処理能力1,500台/月 処理実績台数10,000台/年)、国内向け中古自動車部品販売(登録在庫点数約25,000点 非登録在庫点数10,000点)、中古車販売(平成18年1月より展示開始)、中古部品輸出、金属類買取り、自動車の適正処理(全部再資源化)

●自動車リサイクル業
1975年、解体事業を営む久保田茂社長の兄が体調を崩したために、事業を引き継ぐ形で久保田茂氏が久保田自動車解体(のちに久保田オートパーツへ社名変更)を創業しました。
その後にリサイクル業へ発展させ、部品販売や輸出、中古車販売等事業が広がっていきました。
個人から中古車を仕入れる割合は30%程あり、業界としては非常に高いことが強みになっています。自動車ディーラーや中古車販売店、整備工場、損保、リース物件等、法人経由の仕入れを抑えることが経営に有効だということでした。

●個人が“売って良かった”と思う中古車買取り
オーナーが愛着のある車との別れを惜しむときのためにお神酒があり、愛車と最後に写真をとるためのポラロイドカメラも用意されています。
最近始めたお礼状のサービスでは、〇月〇日に預かったお車、エンジンは国内、A部品はマレーシア、B部品はロシア等々を記載したリサイクル完了報告を作成して愛車が迎えた最期をしっかりとオーナーへ伝えています。

●コストと収益管理の徹底
1台の中古車を仕入れる場合、運ぶ費用、営業費用、仕入代、間接部門コスト、タクシー費用(個人顧客が持ち込んだ場合の帰りの足代)などの管理と同時にその車から売れた部品、鉄くず販売等の収益を管理しています。項目によっては分単位でコスト管理をしていました。このデータは様々な場面で経営に活用できるものでしょう。

●時間外の社員教育
リーダー教育・社員教育・環境教育があります。理念共有の場であり、人としての心を高める重要な時間となっているようです。すべて始業前の時間外であることから参加時間・回数に応じて旅行券を配布していました。

●見学会の受け入れ
地元の小学校を中心に毎年多くの見学を受け入れています。社員の皆さんは説明が上手でとても理解しやすかったです。理念の共有や社員教育がなされていることが心地よく感じられました。

●こんなエピソードがあります。
ある時期から宮崎県のある地域からの中古車持ち込みが多くなりました。理由は、その地区のガソリンスタンドの店員さんがひいきにしてくれていたことが判明。“売るなら久保田だ”とお客さんに言い続けてくれていたからでした。
正しい経営が生み出す社外ファンの存在がここにもありました。

●書籍『一念岩をも徹す』著書;久保田茂
この本は久保田茂社長の波乱の一生をとても正直で謙虚に書かれた自伝です。
・何のために働くかを考えるようになり、“会社は社員の生活を守る砦”と気づいたこと
・社員の生活のための場所を作ることが社長としての役目だと知り、様々な勉強会に参加、書籍をたくさん読んだこと
・沖縄から北海道まで全国の会社を訪ねて回ったこと

そして人生のターニングポイントや公私ともに大きな出来事が語られています。
・高校受験に失敗し、落ちこぼれや不良の集まる高校で自信を無くした時期に、毎日のように校長先生が、“やろうと思えば、誰にでも、できるんじゃから!”と言い続けてくれた言葉が、生涯にわたって自信の源になったこと
・1986年、バイク事故をおこし両手両足が動かなくなる人生最大の窮地から奇跡的な回復を遂げたこと
・1993年、幹部社員の反乱から倒産危機に直面したこと
経営者として地獄のような日々を過ごした経験が、今ではその幹部社員にすら感謝し今日の同社を作り上げてきたことがわかります。

同社の歴史は、久保田茂社長の正直で謙虚でまわりから学び続ける姿勢、想いの強さが作り上げてきたものです。ご訪問した年の年末をもって息子さんへ事業継承を決めていた同社。しかもその8年前から着々と計画をしていたことでした。
『企業を興して半人前、企業を承継してやっと一人前の商人』という本に書かれた言葉が体現された同社でした。
ご訪問当日には現社長のお話も少し伺う事ができましたが、久保田泰規社長のもとでどんな歩みをしているか楽しみにしています。

***補足***
この投稿では2012/4~2018/3までの6年間法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室で経験した【いい会社視察】・【プロジェクト】・【授業で学んだこと】を中心に、毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(桝谷光洋)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です