株式会社びわこホーム【No79いい会社視察2015/2/20】

今回は2015年2月に坂本ゼミの京都・滋賀合宿先としてご訪問した『株式会社びわこホーム』さんをご紹介致します。
同社は地域密着で若い世代を中心に主に新築住宅販売を事業としている会社です。
視察に伺った当時は全国展開をする大手住宅メーカーがある業界の中で、びわこホーム社が地域の新築着工棟数12年連続でNo1でした。
 

●概要 https://biwakohome.com/
社名 株式会社びわこホーム
設立 1990年(平成2年)(視察当時に創業25年)
代表 代表取締役会長 上田裕康
   代表取締役社長 高木光江(2014年に社長就任)
資本金 2300万円
社員数 30名
事業 不動産・建築業、サービス・感動業
売上 15億円
営業エリア 滋賀県甲賀市、湖西市、東近江市の一部 合計人口は17万人(本社から車で30分圏内に限定)
滋賀県は人口141万人ですから約12%が対象エリアです。

●売れ!売れ!が戦略だった会社設立からしばらくの間
同社設立後しばらくの間、営業実績重視でした。上田社長(当時)は口癖のように「売れ!売れ!」と言っていたと正直にお話されました。
そして歩合給制度でした。これを売れば10万円、こっちは20万円の歩合。時には年収が1500万円となる社員もいたといいます。
若い時には無理な働き方ができます。お金欲しさに無理もします。徐々にお金を稼ぐことが目的となっていき、顧客の希望やニーズよりも歩合を得るために働いていたのでしょう。顧客が欲しいものではなく、自分の都合を優先する営業社員が当然のように歩合給を得ていきます。
“売れ!売れ!”に始まる悪しき風土は、一部の社員がお金を得たと同時に、多くの社員が離職していきました。欠員は中途採用で補いますが、それは終わりの見えない不毛なサイクルでした。そんな状況に上田社長(当時)は強い危機感を持ちはじめました。

●2009年 歩合給廃止の決断
“永続する企業をつくりたい”、“社員が幸せになる会社をつくりたい”、そう考えた上田社長は歩合給廃止に向けて、新しい人事制度を1年ほどかけて外部に学びました。
そして歩合給を廃止し、新しい「成長支援シート」を中心とした人事制度を導入しました。
反発もありました。営業部長を含む営業4人が辞めていきます。計算上4人の退職は全社売上の50%減を意味していました。しかし上田社長(当時)の決断はゆるぎないものでした。売上減は上田社長(当時)と高木社長(現在)が営業を行い殆どカバーしたということです。

●新人事制度導入の効果
・個人の成果ではなく会社の目標が優先されたことで現場に会社の考えが浸透していった
・お客様目線、社員(仲間)目線の風土に変わっていった
・部門間を超えた助け合いが生まれた
・離職率が低くなった
・すべてのお客様が担当者だけのお客様ではなく会社全体のお客様になった
・社員の創意工夫が始まった
新人事制度導入は社員の成長を支援する制度として同社に根付いていきました。

●同社のターゲットに隠された真実
同社の主なターゲット層は25~35才、年収300~400万円のエリアです。新築の予算2000万円、ローン返済7~8万円/月がイメージです。
その理由は当初のご説明では伺えませんでしたが、質疑応答の中で明かされました。

上田会長は13才の時お父様を事故で無くして以来、母子家庭となってお母様が6畳一間で兄弟3人を育ててくれたのです。大人になって、住宅の営業の仕事につき、毎日飛び込み営業を続けます。時には塩をまかれ、話を聞いてくれる人は滅多にいません。心は折れそうになる辛い日々が続きました。そんなある夏の暑い日、玄関をたたくと女性が、「お疲れさん、上がっていき~」と声をかけてくれ、家に上がらせてもらい麦茶を出してくれました。話を聞いてくれるかと思ったが、「お兄さん、悪いけどうちは母子家庭で家は買えないの」、その状況は上田会長自身の子供時代の境遇と重なったのでした。
同社がターゲットとしている25~35才くらいの年齢層は、そんな若い人にも家族団らんとなる家庭を持ってほしい、という上田会長の限りなく個人的でありながら創業の動機に繋がる深い想いの詰まった出来事があったからなのです。

●最後に
視察当日、上田会長は終始、自分に対しても回りに対しても正直で飾らずにお話くださいました。
その姿は、多くの人が自身の中にある“弱い部分”として普段は表に出さない人が多いことだと感じました。上田会長はその壁を越えていました。外部での学びの場がひとつのきっかけとして、大きく上田会長そしてびわこホームを変えているのだと感じました。改めて学ぶ姿勢や志しが重要だと教えていただきました。
そしてその時期を一貫して支え続けた高木社長も素晴らしい方でした。
また文章ではふれていませんが、視察の際、同席いただいた数名の若い社員さんの言動が同社の未来を明るく照らしていることに疑いはありませんでした。

***補足***
この投稿では2012/4~2018/3までの6年間法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室で経験した【いい会社視察】・【プロジェクト】・【授業で学んだこと】を中心に、毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(人を大切にする経営学会会員;桝谷光洋)

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