働き方改革と就業規㉘

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▼トヨタ労組、一律ベアの見直し提案「評価で5段階」
 2019年12月26日の日経電子版に、トヨタ労組の春闘見直しの
記事がでており、多くの方々に衝撃を与えたのではないでしょうか。
この伏線は、ご承知のとおり、2018年の「トヨタショック」があります。
2018年トヨタ労組はベア3000円、総額1万300円の要求をしたところ、
会社のベアは「前年の1300円を上回る水準」とし
「全組合員平均で1万1700円の賃上げ」と回答をしたものの、
具体的なベアの額は示しませんでした。
この会社からの1万1700円の賃上げ回答の内容としては、
正社員だけでなく、パートや有期雇用の組合員も含み、
賃金に手当も合わせた数字を提示したものであることから、
ベアの内実はブラックボックス化してしまいました。
今年、トヨタ労組はその会社側の回答を良しとしました。

▼年功序列型賃金から能力給賃金へ加速化?
さらにトヨタ労組は、一律ベアを要求せず、総額要求で、
賃金については5段階の人事評価に基づくことを容認しました。
この場合、社員によってはベアアップ無しとなる可能性まで
容認したということになります。
この評価については、賛否両論あると思います。
どのような賃金制度がその会社に一番マッチするのか、
それはケースバイケースであり、この点の具体的な評価は
専門の社会労務士の方やコンサルタントの方にお任せするとして、
私が気になることを指摘したいと思います。

▼同一労働同一賃金の影響
2018年の会社回答の記者会見で、トヨタは、
「ベアだけで格差を縮めるのは難しい」との発言をしています。
この「格差」は何を意味するのかですが、
法的には「同一労働同一賃金」のことだろうと思います。
そしてベアで格差は埋まらないとは、これまで正規社員と
非正規社員との間に事実上の格差が大きかった会社は、正
規社員の給与体系に非正規社員を引き寄せることは
財政上難しいので、人件費の総額は上げていくが、
その配分は「同一労働同一賃金の原則」に合わせるため、
配分は変え、場合によっては正規社員の給与は平均伸び率よりも
低くなることを許容することを意味します。
これは、非正規社員に頼ってきた企業ほど
厳しい状況にあることを意味しています。
この調整ができるまで、正規社員にとっても
厳しい賃金上昇率を甘受しなければならないかもしれません。
今後は、働く側の選択として非正規雇用が残ったとしても、
会社側から人件費の節減するために正規、
非正規を分けることは避けた方がよろしいかと存じます。

(学会 法務部会 常務理事 弁護士山田勝彦)

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