柏屋さん 「いつも心になごみを」

坂本先生は、「いい店かどうかは、店に入ったらすぐに分かる、空気でわかる」とよく仰っていました。

福島合宿のランチで立ち寄った、「しゃぶしゃぶ温野菜 横塚店」さんでもそう感じたそうです。キャリーケースを携えた30人が入っても、いやな顔をひとつ見せずにニコニコと対処してくれて、その店内にはいい気が流れていたそうです。

私が同様の体験をしたのは、薄皮饅頭の柏屋さんです。福島県郡山市の本店は、いい気が流れていました。入ってすぐに感じました。

作リ手のいい気が、菓子の中にも入っているだろうとも思います。

時に、私は坂本ゼミ時代に企業研究で柏屋さんを担当し、一番興味深く感心もしたのは、初代の発想です。

柏屋の初代 本名 善兵衛さんは嘉永五年(1852年)、

「病に薬がいるように、健やかな者に心のなごみがいる」

と発想をして、奥州街道・郡山宿の薄皮茶屋で餡がたっぷりで皮の薄い饅頭を考案しました。これが柏屋薄皮饅頭の誕生です。

「いつも心のなごみを」

をテーマにすると、美味しさだけでなく、提供者は、心のなごみを定義することになります。

楽しい、幸福の、心に余裕が出る、リラックスする、人に優しくなる、素直な心、温かい心、広い心、柔らかい心、などなど、考えて、意識をはせるでしょう。

「いつも心のなごみを」と発想した初代のこだわりを受け継いだ、代々の社長さんらは、160年間「伝統」を守り、「いつも心のなごみを」提供する商品や店づくりに社員一丸となって取り組んできました。その結果が店内に流れるいい気なのだと思います。

地域への社会貢献活動として柏屋さんが行っているさまざまな活動、例えば月1回無料提供の「朝茶会」、「饅頭神社」、児童詩誌「こどもの夢の青い窓」も、元を辿れば、初代の「いつも心のなごみを」に行き着くのではないかと思います。

私が物心ついたころから、薄皮饅頭=幸福感、でした。柏屋さんの薄皮饅頭は、品格のある特別なオンリーワンの饅頭でした。昭和30から40年代からすでに県下にブランドイメージが定着・浸透していたわけです。

柏屋さんを想うだけで、心がなごみ、幸せになってくる、そんな福島県人は多いと思います。

多くの企業内に神棚はあります。柏屋の社員さんの心の中には目に見えない神棚があるんだろう想像します。でないと店内にあんないい気は漂わないでしょう。

(人を大切にする経営学会 本田佳世子)

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