「危急存亡時のリーダーシップ」

私の手元に「危急存亡時のリーダーシップ ー 『生死の境』にある組織をどう導くか(原題 “IN EXTREMIS LEADERSHIP – Leadership As If Your Life Depended On It”)  」という書籍がある。「リーダーシップはリーダーを見つめる人の目の中にある。」という言葉を教えてくれた故渡辺博先生が翻訳して2009年に日本で出版したものである。

著者である米国陸軍のトーマス・コルディッツ大佐(出版当時)は言う。「危急的試練の場は独特であり、独特の結果を生む。本物の挑戦から、本物のリーダーが生まれる。利己的な人々を排除する状況から、無私のリーダーが生まれる。無能と不注意を許容しない環境から、注意深く有能なリーダーが生まれる。物質的富と社会的力がなにも価値を持たない場所から、道徳的責務と社会的良心に動かされるリーダーが生まれる。やり直しが許されない世界から、人が最初から物事を正しく行う世界が生まれる。」

「次の瞬間死ぬかもしれない」という状況にいる最前線の兵士たちがリーダーに期待することの第1は「実行力(Competence)」である。不確実性の高い困難な状況で作戦を計画遂行し、かつ自分たちの身の安全を最大限確保することができる能力である。そして、第2に、リーダーのフォロワーに対する「忠誠心(Loyalty)」である。忠誠心という言葉がしっくりこなければ「フォロワーひとりひとりに対して自分が追う責任」あるいは「信義」といってよいかもしれない。「ワンチーム」と唱えれば「ワンチーム」になるわけではない。リーダーが「リードする人々の成功」を望むからチームができるのである。

世界でパンデミックが進行する今、リーダーに求められるのは、チームの知恵と力を総動員して、個人の命を守り、生活を守ることである。感染の封じ込めに成功して犠牲者を最小限に抑え、社会経済活動を維持できている国のリーダー、社員を感染させず、雇用を守り、取引先を守り、会社を守ることができる会社のリーダーは、コルディッツ氏の言う「実行力」と「忠誠心(信義)」を備えた人たちだ。だが「危急的試練の場は独特であり、独特の結果を生む。」とはまさにその言葉の通りで、一つの成功例が、他の国、他の会社でそのまま流用できるわけではない。「実行力」の差は、危急時を常に想定して備えているかである。そうして初めて、情報が錯綜し、状況が刻一刻変化し、緊迫の度合いが高まっていく状況にあって、先手先手で行動すべきことを決めて、自らの責任で行動することができる。

経営人材塾 1期生 野村 国康

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「「危急存亡時のリーダーシップ」」への2件のフィードバック

  1. 同程度の知識があっても、実行の質と量で結果は大違い、、、組織も国も、、平時向きと危機変革時向きがあるよね。リーダーの適材適所適時を誤ると、ロクな結果は期待出来ない。失敗を含めた自他経験を反映してコメントしました。

    野村さん、お元気そうで嬉しいです。長江敏男🕺

    1. 長江さん ありがとうございます。ほかの人の言動と行動を見て、自分がまねして失敗する、人があってリーダーシップがあることを、それで覚えました。コメント返信遅くなりました!