ノルマと目標は違う

日経ビジネス最新号(2020年8月10日号)は、「もうやめる?ノルマ コロナ時代の営業新常態」との特集記事が出ています。今時、営業担当社員にノルマを課して、社員間を競争させる「昭和時代の企業」があるのか、とも思いましたが、まだ多く存在しているようです。しかも新型コロナ禍において、接触営業が難しくなる中、記事によれば、「業績の目標値は変えずにとにかくやり遂げる方針。コロナだからと言い訳しても始まらない。営業部隊にはやり方を工夫するよう指示を出していて、みんな以前の通りノルマを達成しようと努力している。」とする根性営業を実践している企業もあるそうです。これらの会社では、多くの営業担当社員は、基本給と歩合給の2本立てとなっており、比較的歩合給にウェイトを置いている場合が多いです。

 しかし記事では、何の対策も取らずに新型コロナ禍においてノルマを課すことは、むしろ企業の業績を悪化させ、場合によっては企業の存続自体を危うくすると警告しています。確かに昔ながらの営業は、お客様にガンガンアプローチをし、関係性を作って取引をしてもらう形態ですが、新型コロナ禍においては、接触営業自体が、お客様にとっては非常識な営業と受け止められかねません。また無理な営業戦略により、社員自身が疲弊してしまい転職を選択することも考えられます。

 経営には、経営目標は必要です。社員にとっても、目標は必要です。しかし、それはノルマではないと思います。

例えば、人を大切にする経営学会副代表の近藤宣之さんが代表を務める株式会社日本レーザーでは、目標を設定した上で、歩合給ではなく成果賞与を支給することとし、目標未達でも粗利益額に応じた変動制の成果賞与を設定しているそうです。これならば社員は追い詰められることなく、モチベーションを上げて、「イキイキワクワク」仕事をすることができます。

また坂本光司先生はよく、そもそも営業について、ノルマによる営業ではなく、「最高の営業は、営業をしない営業である。」とおっしゃっています。営業をしない営業とは、リピーター率を高める営業であり、お客様の口コミ、紹介を増やしていく営業をいいます。このように、お客様をファンにしてしまう営業は、新型コロナ禍のような状況にあっても困りません。このような営業は、仕事を通じてお客様に信頼されることが必要です。数字のみを大切にし、ガツガツする営業では、このような信頼関係を作ることは出来ないのではないでしょうか。

(学会 法務研究部会 常務理事 弁護士山田勝彦)

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