人を大切にする会社の新型コロナ対応

会社は、社員のためにどの程度の新型コロナウイルス感染症対策をすればよいのか。法律的には、会社は社員に対して安全な職場環境を提供する義務があります。これを怠り、感染症のクラスターが発生した時には、場合によって会社がその損害を賠償しなければならない場合があります。

今回の新型コロナウイルス感染症は、発症してしまった社員のことも考慮しつつ、いかに会社に関わる人々(社員、社外社員、顧客など)を守れるかに主眼が置かれます。

まず、感染予防は当然です。体温チェック、アルコール消毒、ディスタンス(遮蔽)、換気は最低限必要となります。次に万一、社員の中に感染者が出てしまった場合に、早期に感染拡大の可能性を把握するために、日頃からどのような措置をしているかがポイントとなります。まず、新型コロナウイルス禍の最中は、社員の日頃の行動確定・記録が必要です。特に誰と接触していたかが把握できるようにする必要があります。比較的社員の多い会社では、社内で社員同士が接触する機会を少なくするとともに、接触する範囲を限定することも大事です。

 行動記録は、本人が手帳にメモするというのでもいいのですが、万一本人が感染し、直ぐに高熱等になってしまった場合には、本人の行動記録を入手することが難しくなることから、記録は社内の主だった責任者がアクセスできる形で記録しておく必要があります。

 感染により休んだか社員には、本人から有給休暇の申請がない場合、原則として無給となるのが一般的です。本人が傷病手当金の申請をすることにあろうかと思います。仮に特別に会社で何らかの支給をする場合には、他の感染症の場合とバランスを取る必要がありますので、今回に限り特別の手当をするということは避けた方がよいと思われます。

 本人は未だ陽性となっていないけれども、家族に陽性者がでた場合や、濃厚接触者として待機の必要があるような場合には、会社としては他の社員を守るためにその人に積極的に休んでもらうこととなると思います。したがって、原則的には、会社都合による休業となり、最低60%の賃金の支払いが必要です。この場合に、多くの会社では、80%程度は支給しているのが実態ではないでしょうか。もっとも、賃金が下がるとなると、賃金減額を避けるために、家族に陽性者が出ても会社には通知しないという心理になる社員もいるかもしれません。それでは、会社の感染リスクが高まってしまいます。そこで、会社の感染リスクを抑えるために、このような会社都合による休業の場合にも全額賃金を保障するということもあり得ます。

また、この場合に備えて、普段、テレワークの対応をしていない会社でも、テレワークができるような状況や自宅でもできる作業を事前にセレクトしておくとよいかもしれません。そのような仕事があれば、休業手当を考える必要がなくなります。休まざるを得ない社員も後ろめたさを感じず、堂々と休むことが出来ます。

 日々情勢が変化する状況ですが、創意工夫してこの難局を皆で乗り切りましょう。

(学会 法務研究部会 常務理事 弁護士山田勝彦)

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