ともに働きたくなる人を大切にするいい会社:但陽信用金庫

 こういう時期だからこそ、坂本光司先生の著書を学び直しています。
今回は、但陽信用金庫(金融業)”についてご紹介させて頂きます。
(“但陽信用金庫”のホームページ:https://www.tanyo-shinkin.co.jp/index.html

1.“創業の理念
 -“30年後に花が咲く”ことをめざして -

〇長期的展望で事業と人を育てる“林業経営”が創業の理念
 “但陽信用金庫”は、1926年生野銀山で栄えた兵庫県(現)朝来町で誕生しました。この地は、山が多く、林業が盛んな地域でした。林業は木を植えてからお金になるまで何十年という月日が必要ですので、“但陽信用金庫”は「30年後花が咲くことをめざして、長期的な展望で事業を続ける」ことを理念として創業しました。この“長期的な展望で事業と人を育てる“林業経営の考え方が、「正義・革新・人間愛」というおよそ金融機関とは思えない“但陽信用金庫”の経営理念につながっています。“社章”も「木のマーク」になっているのです。

2.“社風を伝えるエピソード
 - “くらしに関するあらゆる相談”を受けつける -
“但陽信用金庫”の社風が分かる“エピソード”をお伝えしたいと思います。

〇年間8,000件の“よろず相談”を受ける
 “但陽信用金庫”には、取引のあるなしにかかわらず「健康、福祉、介護など暮らしに関わるあらゆる相談ができる“よろず相談室”」があります。今では、年間8,000件もの相談があり、本当に地域の住民に頼りにされています。「地域の盆踊りや夏祭り、マラソン大会など、イベントには必ず職員が参加し、盛り上げ役を買っています。」
 阪神淡路大震災の際には「援助物資の仕分けに人手が足りない」と聞き、“ボランティア派遣活動”を始めました。「“援助物資の仕分け”から、“仮設住宅者のお困りごとの支援”と続き、今は“高齢者や障がい者の移送車による移動支援”を続けています。ボランティアを通じて、職員たちに“人にたいする優しさ”が自然と育っていきました。」

〇NPO法人“但陽ボランティアセンター”
 “但陽信用金庫”では、ボランティア活動を鐵定するため“但陽ボランティアセンター”を設立しています。先にあげた“高齢者などの移送サービス”と“緊急通報システム ベルボックス”などに取り組んでいます。“ベルボックス”は、仮設住宅で起きた孤独死というつらい経験から生まれました。
 「ボランティアが仮設住宅の1人暮らしのおじいさんを訪ると、ふとんの中で既に冷たくなっていました。“1人ぽっちでは絶対死なせない”。この想いが生んだ“緊急通報システム”ですが、“さびしい”から連絡をされるお年寄りもおられます。そんなときの職員との何気ない会話がお年寄りのなぐさめになっているようです。」

〇職員は家族、取引先・地域住民は親戚
 “但陽信用金庫”の理事長は「職員は家族、取引先・地域住民は親戚」と言われています。「私の仕事は、社会で今何をしなければならないか、職員がどうすれば喜んでくれるか、考えることです。」職員のためどのような運営をしているか、いくつかご紹介します。
・職員が安心して働けるよう「残業はほとんどありません。」それを可能とするため、人員を多く配置しており組織にお互いさま風土が醸成されています。 
・職員が亡くなった場合、その子どもが大学を卒業するまで「育英資金」を支給します。 家族手当も、手厚くしています。
・経営幹部に24時間いつでも悩みを相談できる「ヘルプライン(携帯電話)」がかけられます。 その他、年2回、全職員から理事長宛の「親展便(メール相談)」も制度化されています。

3.“私が感じていること
 - ボランティアは“させていただくもの” -

〇ボランティア活動ほどすばらしい人間教育はない
 “但陽信用金庫”は、“地域共生課”を設置して本格的なボランティア活動に取り組んでいます。役職員あげての献身的な活動に「人のやさしさにふれ、生きていく力が湧きました」「助けていただいたご恩に私もいつか報いたいです」という感謝の言葉がつぎつぎと届きます。
 しかし、もっとも感動したのは自分がしたことで人にとても喜んでもらえた職員たちでした。「ボランティア活動ほどすばらしい人間教育はありません。このことを通して“相手の人に喜んでもらえることをするのがじぶんのよろこび”となるような人間をつくることが、私の仕事です。それは、企業の存在意義にも通じます。たくさんの方によろこんでいただけることが企業の存在する意味ですし、結果としてそれが企業の業績にもつながっていきます。ボランティアは“させていただくもの”だと考えています。」

 私も、ボランティア活動を通じて、少しでも自分がお役に立てることの喜びを感じています。“させていただくもの”だと、つくづく思いました。

 “但陽信用金庫”は、地域に密着し信頼されているから、30年間で5.8倍も預金量を増加させるような信用金庫になりました。「職員と地域の人たちに一生懸命向き合って、“この地域から但陽信用金庫が無くなると困る”と言われるような信用金庫をめざします。」理事長が、口癖のように言われていることばだそうです。

人を大切にする経営学会人財塾2期生(合同会社VIVAMUS) 中村 敏治

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