SDGsの本質を考える

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、日本国内にかなり浸透してきたと感じます。
国連は、2015年にSDGsという共通枠組みのもとに、世界の国々はともに2030年までに17の目標を達成しようと呼びかけました。このSDGsの以前にも、国連はMDGs(Millennium Development Goals:ミレニアム開発目標)という8つの目標からなる宣言を2000年に発表し、2015年までに達成することを呼びかけました。MDGsは日本では国際協力の関係者以外にはほとんど知られずに終わってしまったことを思うと、長らく国際協力業界で仕事をしてきた私の感想としては、近年のSDGsの普及ぶりは素晴らしいと思います。
 他方、普及すればするほど、SDGsの本質から離れた理解がなされていることが多々あると感じています。企業がSDGsへの取り組みを多くの人々に知ってもらうために広報をすることは大変重要だと思いますが、最近では商品を売る手段としてSDGsに取り組んでいるように“見せる”ことに一生懸命になってしまっている企業が増えているように思います。また「3カ月でSDGsの取り組みが完成するノウハウを教えます」というような“SDGsコンサルタント”という名の商法も増えています。
SDGsに取り組む企業が人々に支持されるようになり、多くの企業がSDGsへの取り組みをはじめるのは大変喜ばしいことですが、手段と結果が本末転倒になってしまい、本質から乖離してしまうのを何とかしたいと考えています。
 SDGsの本質を、日本語でもっとわかりやすく伝えることはできないものか?と日々考える中で、先日、今は亡き日本理化学工業 大山泰弘会長の著作「利他のすすめ チョーク工場で学んだ幸せに生きる18の知恵」(WAVE出版)からの引用は、SDGsの本質を説明するのに伝わりやすいと思いました。
 大山会長は “「利他」のこころが「生きる力」の根っこになる” と語っています。
文部科学省は、21世紀型教育として、“SDGsを達成するために「生きる力」を身につける”としています。

以下、「利他のすすめ」からの抜粋です。(同書92-93頁より)

 文部科学省の資料をみると、「生きる力」として次のように記されています。
①基礎的な知識・技能を習得し、それらを活用して、自ら考え、判断し、表現することにより、様々な問題に積極的に対応し、解決する力
②自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など豊かな人間性
③たくましく生きるための健康や体力 など
 たしかに、どれも大切な力です。
しかし、私はより根源的なものがあると考えています。
 それは、

「人の役に立つことが自分の幸せなんだ」
ということ、つまり「利他」こそが自分のためになることを知ることです。
その気持ちこそが、「生きる力」の根っこになると思うのです。

同書の終章で大山会長はマザー・テレサの言葉を引用されています。

この世の最大の不幸は、貧しさでも病気でもありません。
自分が誰からも必要とされないと感じることです。

「人間の幸せとは、
  人に愛されること、
  人にほめられること、
  人の役に立つこと、
  人から必要とされること、
 で得られるものであり、
 愛されること以外の3つは、働くことで得られるのです。」
との僧侶からの教えを私たちへ伝えてくださった故大山会長の偉大さを改めて感じ、SDGsの本質を説いている言葉たちを噛みしめています。

人を大切にする経営学会 人財塾生 松久 知美

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