ともに働きたくなる人を大切にするいい会社:伊那食品工業

 こういう時期だからこそ、坂本先生の著述を勉強しなおしています。
今回は、“伊那食品工業(主事業:寒天の製造販売)”についてご紹介いたします。
(伊那食品工業のホームページ:https://www.kantenpp.co.jp )

. 社是は“いい会社をつくりましょう”
 - 会社を取り巻くすべての人びとが“いい会社だね”と言ってくださる会社 -

●生きていること、働けること自体がよろこび
 今の“伊那食品工業”にした先代社長は、10代の頃結核で3年間入院し生死をさまよいました。「生きていること、働けること自体がとてもうれしく、誰よりも仕事に精をだしました。」その姿が社員のモチベーションを高め、今の“伊那食品工業”につながっていきました。
 その後、先代社長は“すべてにおいて敵をつくらない経営”を実践していきます。「同業他社にはできないオンリーワン商品を創りました。下請け企業には、適正価格で取引するなどの配慮をしてきました。地域住民の方がたには、環境問題も含めご迷惑をお掛けしないよう配慮してきました。」この継続が、顧客満足度も地域満足度も社員満足度も下請満足度も高い“伊那食品工業”をつくったのです。

. “社風を伝えるエピソード
 - 関わるすべての人びとの幸せのため着実で堅実な経営をおこなう -

“伊那食品工業”の社風が分かる“エピソード”をお伝えしたいと思います。

●自社で考え、自社で創って、自社で売る
 “伊那食品工業”は、目先の利益を追って無理な成長はしません。全国展開している大手スーパーが、“伊那食品工業の商品を売りたい”と言ってきたことがありました。注文を受ければ、1年間で何十億円もの売上げになります。
 「申し訳ありませんが、当社の身の丈に合いませんのでお断りさせて頂きます。一時的に無理をすると後で反動を招き永続を阻むことになります。商品をたくさん売ることは目的ではないのです。この会社は“自分で考えたものを自分で創り、自分で売る”主義なのです。そうしないと、“創った人のよろこびと苦労”がお客さまに伝わらないですから‥。」このように、社員とお客さまに配慮した経営をブレずに続けてこられました。

●100年カレンダー
 “伊那食品工業”は、100年先をみて経営をしているそうです。
「この会社は、100年先をみて経営しています。会社を継続させるため、この世になかった商品(オンリーワン)を創ることをめざし、“成長の種まき”を怠りません。未来への種まきを一生懸命行い、継続的に水や肥やしを与えているのです。」
 そして、先代社長はこう続けます。「成長するのも利益を上げるのも、会社を継続させるためです。なぜ継続させるかと言えば、社員を幸せにする”ためです。」
 会社のあちこちには、社員教育のために“100年カレンダー”が貼ってあるそうです。100年カレンダーを見せながら新入社員に自分の命日を入れてもらい、残りの人生の生き方・働き方を考えてもらうのです。

●市民が憩う開かれた会社
 “伊那食品工業”の本社は3万坪の敷地がありますが、自然のかたちを活かすということで“建物が斜めに建っていたり”します。塀もないので、どこまでが敷地かわかりません。敷地の中に“通学路”もあります。“そのような公園の中に寒天工場がある”ということで、「かんてんぱぱガーデン」と呼んでいます。
 社員たちは、ここを自分たちの庭だと思っているようで、朝早くに会社に来て“離れた道路・溝やマンホールの中”までみんなで掃除をするのです。休みを利用して“花の剪定”をする者もいます。
 「訪れる人が安心して憩える空間です。ベンチでゆっくり四季折々の風景をお楽しみください。食事や喫茶ができる場所も売店もあります。他にも、アート鑑賞をしたり、地域の文化施設もあります。」“伊那食品工業”で働く社員は、ガーデン内の心配りだけでなく、プライベイトでも周りへの配慮を欠かさないそうです。

. “私が感じていること”

●会社は社員の幸せを通して社会に貢献するためにある
 “伊那食品工業”は、創業以来1度も“リストラ”を行ったことがありません。「” “リストラ”を行うような経営は間違っています。我が社は、これまでも、これからも“リストラ”はやりません。なぜなら、我が社にとって人件費はコストではなく目的である“社員の幸せを実現するための生活費”だからです‥」
 この会社は、社員のためならこんなことまでします。「“寒天を漬けるために使う大きな石”を、社員が操作を誤って“足先に大怪我”をしました。当時、会社がようやく黒字転換したばかりで、資金面の余裕も全くないときでした。先代社長は悩みましたが「社員に二度と危ない作業はさせられない」と、安全のために多額の設備投資を実行しました。これほどまでに、社員のことを考える会社なのです。「会社は、社員の幸せを通して社会に貢献するためにある」のだとつくづく考えさせられました。
  “伊那食品工業”は、新規商品の開発を継続し、寒天業界では“国内80%、世界で15%のシェア”を持つトップ企業になりました。48年間、増収増益も継続致しました。「この会社は、“継続”を心がけて着実で堅実な経営を行う“年輪経営”です。そうすることによって、取引先や顧客、社員など社会にご迷惑をかけないようにしております。」

人を大切にする経営学会 人財塾2期生(合同会社VIVAMUS)中村敏治

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