真の交渉力は、人間力にある

交渉スキルは、私たちにとっては日常的な業務の一環としてなくてはならないスキルですが、これは専門家に限らず、誰にとっても必要な能力です。

 営業におけるお客様との交渉はもちろんのこと、私たちは、子どもの頃から、交渉をしてきています。子どもが親からお小遣いをもらおうとするとき、誕生日のプレゼントをもらうとき、今日の夕食に好きなフライドチキンを作ってもらうときなど、日々交渉を行っています。上手くいくときもあれば、行かないときもあったと思います。

 交渉で上手くいく方法は、いくつかあります。まずは圧倒的な力で押さえつける交渉です。このような交渉方法は、今でも「人を大切にしない」会社ではよく実施されています。相手は不満をもつものの、それに従わざるをえず、いつ関係が決裂するか分からない交渉方法です。

 次に、こちらの強みを強調しつつ、相手の弱みを踏まえて、妥協点を探る方法です。これも若干前者の場合と同様な感じではありますが、必ずしも一方的なものではなく、情報量の差が出る部分であり、よく交渉には使われています。

 三つ目は、以前にここでも書いたWinWinの解決策を見つけ、それで交渉する方法です。視点を変え、行き詰まっている交渉を別の方向から進める点で、優れた交渉方法です。もっとも、このようなWinWinの解決策というのは中々見つからないものです。

 そして、もっとも最強なのは、人間的な魅力によって相手と交渉する方法です。時には本音や弱みを見せつつ、誠実な人柄で相手を説得し、交渉していく方法です。これはWinWinの解決方法よりも、違った意味で高度な交渉です。しかし、交渉相手は、決して嫌な思いをすることなく、押し切られたと思うこともありません。交渉としては優れた交渉です。このような交渉ができるようになるためには、高度の人間力が必要です。

 社員の人間力が高まれば、自社の交渉もスムーズに進むはずです。

 経営者の皆さんが、倫理、哲学、宗教を学ばれ、それを社員に伝えていく。その副産物として社員の人間力の向上があるのではないかと思います。リベラルアーツは交渉力を高めることにもなるのです。

 その意味では、一生勉強していかなければなりなせん。自戒を込めて。

(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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