NHK「青天を衝け」 渋沢栄一VS岩崎弥太郎

大河ドラマも終盤の山場を迎えます。

『論語と算盤』を書き残した渋沢栄一は、公に尽くす道徳と富を得る知恵は共存できると唱えています。

しかし、渋沢自身の人生を見ていると、論語も算盤も拒否する局面がありました。論語を残した孔子自身の夢は、高級官僚となって公のための政治行政を執行することでした。それを知る渋沢は大蔵官僚となって明治維新を成し遂げました。ところが官僚政治の生き苦しさに嫌気がさし大臣のイスを蹴って実業界に下ります。実業界でも大活躍しますが三井・三菱の財閥と徹底抗戦します。

そしてNHKの大河ドラマでは、岩崎弥太郎を敵に回し算盤(経営)を度外視した死闘の局面を迎えます。岩崎が業界独占や社長による会社の支配という欧米流の資本主義を展開するのに対し、渋沢は「合本主義」「道徳経済合一説」を唱えてステークホルダーとの共益という日本的な資本主義を展開します。

公益を追及するという使命や目的を達成するのに最も適した人材と資本を集め事業を推進させる必要を説きます。広く資本を糾合するという事から、狭義には株式会社制度の意に使われるが、栄一は私益のための資本の集中では無く、公益の追及とより良い社会の実現のために、資本や人材を合わせる事の重要性を説きました。

大正5年(1916年)に『論語と算盤』を著し、「道徳経済合一説」という理念を打ち出しました。幼少期に学んだ科『論語』を拠り所に倫理と利益の両立を掲げ、経済を発展させ、利益を独占するのではなく、国全体を豊かにする為に、富は全体で共有するものとして社会に還元することを説きました。

『論語と算盤』の理念・・・

「富をなす根源は何かと言えば、仁義道徳。正しい道理の富でなければ、その富は完全に永続することができぬ。」

この著作を思いついた一つのきっかけは、米国大統領ルーズベルトから得た日本評であると私は聞いたいます。

「日本の素晴らしさは規律ある軍隊と神秘的な文化。日本の問題は約束を守らない商業」

今では考えられませんが、当時の日本商人は私欲に走りウソと納期延滞が国際的に知られており、これを渋沢は恥じていたと考えます。

開国から150年。渋沢の理念に現実社会がようやく追い付こうとしています。

あなたの会社の理念は何ですか? 社員やステークホルダーに浸透していますか?

学会員:根本幸治

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