「大切にすること」と「甘やかすこと」は違う

人を大切にする経営学会近藤宣之副会長(株式会社日本レーザー代表取締役会長)がおっしゃられる言葉です。皆様もお読みになられていると思いますが、ご著書『社員を「大切にする」から黒字になる。「甘い」から赤字になる。』(あさ出版)と表題にも書かれています。

 しかし現実の具体的な場面では、「甘やかす」ことと「大切にする」ことの区別が意外と難しく感じます。社員の行動の結果、不利益な結果が生じてしまった場合、社員の要求が過剰な場合、どこで線を引くのか。

 私は、時に周りの人から「甘い」と指摘されることがあります。私自身、自分に「甘い」ので他者に対しても厳しくできないのだと言い訳をしてきました。ついつい面倒になり放任となってしまうのは最悪です。これは「甘やかす」でもなく、単なる「怠慢」だと言われてもしかたないと思います。そのように反省する時もしばしばです。

 個別の判断は難しいので、やはり一定のルールが必要だと思うのです。本質的には、その社員の行動が「利他」なのか、「利己」なのかで判断すべきだと思うのですが、この違いは、なかなか表面上は分かりにくい面があります。

 ルールはある程度、外部からも分かるものでなければなりません。

 その判断基準は、次の2点ではないかと思うのです。

 1 その行動は、不相当な自己の利益を求めた結果、他人に対して迷惑をかけるものか否か。

 2 その行動は、会社に対して不合理に不利益を与えるものか否か。

 まず、1の「自己の利益を求め」る際に、「不相当な」としているのは、人が生きていく上で、その人個人の尊厳があり、人権もありますが、その権利を行使することが「相当性」を欠く、つまり独りよがりで他者のことを何も考えないほど酷いかどうかで判断するということです。「他人」は、他の社員や社外社員、お客様そして社会及び株主を指します。つまり関わる人全部です。結果として、他人に迷惑をかけることがないのであれば、それは社会的に問題がないので、許されることになります。

 2については、例えば、震災の際に会社に損害を与えても地域社会の方々の逼迫を救うために行った行為などのように、合理的な意味があって、その結果会社に不利益を与えてしまうことは、許容されるべきだと考えるので、それは許容するという考えで、このように定義してみました。

 難しい課題なので、これからも学会で学びながら、考え続けたいと思います。

  (学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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