失敗からしか学べない

人を大切にする経営を実践されている経営者の皆さんのお話をお聞きすると、自分と違い、素晴らしい経営を実践されていることに敬服してしまうと共に、我が身と引き比べ、自分の至らなさを思い知らされる毎日です。

一方で、このような経営者の皆さんから、若い頃の失敗談等をお聞きすると、少しほっとしたりしてしまいます。

ある経営者の方は、成功したのは1割で、あとの9割は失敗の連続だったとおっしゃっていたことがありました。しかし、必ず付け加えられるのは、「この失敗が大事なんです。」という言葉です。

 経営学者であり経営の実践者でもある野中郁次郎さんらの共著に有名な「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」という名著があります。経営者の方々は、かなり読まれている方が多いのではないでしょうか。ノモンハン事件、ミッドウェー海戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦と日本軍が敗戦に向けて進んでいく過程を、レトロスペクティブに、ある意味冷徹に、客観的に分析した名著だと言われています。この本から学んだことは沢山ありますが、一番強く印象に残ったのは、人は失敗からしか学べないということです。

 成功体験は、とても心地よいものです。成功体験をすると、それが自信に繋がり、自己肯定感に繋がるようにも思います。

しかし、気を付けなければならないのは、それが成功体験であるが故に、その成功体験に執着してしまう弊害があるということです。一度成功すれば、同じように実践すれば、また成功すると思ってしまいますが、世の中は変化をしています。その当時成功した環境と今の環境は全く違ったりします。同じようにやっても必ずしも同じように成功はしないのです。そこに執着しようとすると学びの機会を逸してしまいます。

 失敗をしたときは、感情的には1日も早く忘れてしまいたいと思ってしまいます。私は、失敗を振り返るのはとても苦手です。心の痛みがあの時のように思い出されてしまうからです。それでも、ここをぐっと堪えて、なぜ失敗したのか原因を究明し、どうすれば良かったのかの改善点を見つけ出し、再びチェレンジをしてみる。また失敗しても、きちんと分析・検証していれば、今度の失敗の原因は前の失敗とは違うはずですし、その改善点も変わってくるはずです。それを積み重ねていくことにより、成功に結びつけていくことでしか人も企業も成長できないのではないか、と思うのです。

 謙虚に謙虚に失敗と向き合い、そこから学びを集積していくことが大切だと思う今日この頃です。

 (学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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