公益通報について

2023年1月22日、日本経済新聞デジタル版に、2022年10月に改正公益通報者保護法についてのアンケート結果の報道がありました。主要609社に実施した企業法務税務・弁護士調査で、調査に回答した217社の31.3%にあたる68社が「効果あり」とし、「効果なし」は10.6%、「分からない」は54.8%だったそうです。効果の内容について、最も多かったのが「通報件数が増えた」(42.6%)だったとのことです。

 私どもも公益通報の窓口となっていることもあり、体感的に調査実施結果は正しいと思います。もっとも、まだ公益通報とはどういうものかの理解が周知されていないために、せっかく通報があっても公益通報に該当しないケースが比較的多い印象です。

 公益通報の対象となる事実は、公益通報者保護法第2条3項に定義があります。そこには次のように記載されています。

「1 この法律及び個人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法律として別表に掲げられるもの(これらの法律に基づく命令を含む。以下この項において同じ。)に規定する罪の犯罪行為の事実またはこの法律及び同表に掲げる法律に規定する過料の理由とされている事実」

 2 別表に掲げる法律の規定に基づく処分に違反することが前号に掲げる事実となる場合における当該事実の理由とされている事実(略)」

 誤解を恐れずに単純化すれば、何らかの犯罪事実、行政関係の違反により罰金などの罰則が科せられるような事実などをさしています。

 たとえば、社員や役員が会社の事業に関係のない私生活上の法令違反行為も公益通報の対象とはなりません。

特に誤解が生じやすいのが、ハラスメントです。ハラスメントなどは、暴行、傷害、名誉毀損や強制わいせつなど、何らかの犯罪にあたる事実まで行われないと公益通報の対象にはなりません。つまり一般の言動によるハラスメントそれだけでは公益通報の対象となりません。現在は、ハラスメントに対して相談窓口を設けるようになってきていますので、そちらの担当となります。

中小企業のようにいくつもの窓口を設定できない場合、同じ担当者が、社内の公益通報窓口とハラスメント相談窓口を兼務している場合があります。しかし、公益通報の場合とハラスメントの場合では、その後の対応の仕方が異なりますので、会社側でも混同しないように注意をする必要があります。

(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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