人権デューデリジェンスの取組みを

SDGsは、ご承知のとおり、持続可能な開発目標であり、国レベル、人類レベルで重視をすべき目標です。これに対して、ESG(Environment Social Governance)は、SDGsの目標の中で、特に企業を対象として、企業としての取り組み姿勢といわれています。

 最近は、大企業の中にESGの課題解決をめざした「サステナビリティ委員会(ESG委員会)」または、「サステナビリティ諮問会議」を設置している企業が多くなってきました。特に環境問題と人権問題は極めて重要となってきています。

 4月19日付け日経新聞によると、ESG委員会を設置している上場企業は、主要400社の内、46%となるそうです。

 一方海外では、グルーバルなサプライヤー、取引先、進出国の従業員などとの関係を通じて、企業が海外の人権状況に影響を及ぼしていないかを確認し、適切な対応を取る必要性が強く認識され、法制化されている国も多くなってきました。たとえば、フランスでは、2017年3月に成立した「親会社および発注企業の注意義務に関する法律」により従業員数が一定規模以上の企業に対し、親会社が海外子会社やサプライチェーン上で及ぼす人権・環境に対する悪影響についての注意義務に関する計画書の作成、実施、有効性評価、開示を義務づけたり、ドイツでは、2023年1月に成立した「サプライチェーン・デューデリジェンス法」により従業員数が一定規模以上の企業に対し、間接的な取引先も含め自社のサプライチェーンに関わる国内外の全企業が人権・環境リスクにさらされないようデューデリジェンスと人権報告書の作成、公表などを義務づけるなど、欧米の多くの国で何らかの規制がされ始めました。

 日本では、2022年9月、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のガイドライン」が定められました。このガイドラインは、法的な義務をかすものではありませんが、「企業の規模、業種等にかかわらず、日本で事業活動を行う全ての企業(個人事業主を含む。以下同じ。)は、国際スタンダードに基づく本ガイドラインに則り、国内外における自社・グループ会社、サプライヤー等(サプライチェーン上の企業及びその他のビジネス上の関係先をいい、直接の取引先に限らない。以下同じ)の人権尊重の取り組みに最大限努めるべきである。」としています。その上で、企業は、人権デューデリジェンスの実施をするべきであり、自社、グループ会社及びサプライヤー等における人権への負の影響を特定し、防止・軽減し、取り組みの実効性を評価し、どのように対処したかについて説明、情報開示等一連の行為を実施することを求めています。

 是非この機会に下記PDFの一読を!

https://www.meti.go.jp/press/2022/09/20220913003/20220913003-a.pdf
(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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