今は八人に一人がうつ状態だという。

「がんばれ」という言葉
日本は世界でも有数の
豊かな国になったけれど、
今は八人に一人がうつ状態だという。
 
周囲を見渡しても、
うつ病というほどではないけれど、
けっこうな数の人が
うつ状態で苦しんでいる。
 
うつの人に一番いってはいけないのが、
「がんばれ」という言葉。
 
日本人は「がんばる」
という言葉が大好きだ。
 
だから、相手の気持ちを想像する前に、
口癖のように「がんばれ」と言ってきた。
 
また、自分も言われてきた。
 
だから、悪い言葉じゃないと思ってきた。
 
でも、心の中で葛藤(かっとう)
している人にとっては、
その「がんばれ」がムチにもなる。
 
たとえば、進行したがんの患者さんの
ところにお見舞いに行ったとき、
つい「がんばってね」なんて
口にしてしまう。
 
言う側は簡単。
 
なんとなく病室を出やすくなる。
 
だけど、言われたほうにすれば、
「俺のがんばりが足りないから
よくならないのか」と、
ますます自分を責めてしまう。
 
もちろん、「がんばれ」という
言葉で励まされて、
立ち直る人もたくさんいる。
 
とはいえ、その言葉が、
ときに悪いほうに作用することもある
と知っておくことが大事だと思う。
 
少なくとも、
「がんばれ」と
「がんばっているね」
 
という言葉の差に気がつくだけで、
救われる人が出てくる。
 
「がんばっているね」という言葉は、
自分のことを認めてくれる言葉。
 
魔法の言葉なんだ。
 
病気に苦しむ人にとって、
受けとめてもらうことは、すごく大事。
 
「つらかった」と
ポロリと弱音を吐いたとき、

主治医が「つらかったでしょう、
よくがんばってきましたね」
 
なんて言ってくれたら、生きる力がわいてくる。
 
 
- 鎌田實さん -
 
 
出典元:(いいかげんがいい 集英社)

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