試用期間とは

多くの会社で、試用期間を設けていることかと思います。社員を採用する際には、入社後3か月ないし6か月程度の試用期間をおいて、その間に社員としての適性を判断し、問題がなければそのまま採用、適性を欠いた場合には本採用しないという運用が行われているものと思われます。

 もっとも、多くの会社では採用を慎重に検討し、内々定、内定、入社と段階を踏みながら、試用期間に入っているものと思います。

 この試用期間、ある意味でカップルの同棲に似ていると考える人もいるかもしれません。まず同棲をしてみて、夫婦の共同生活が望ましいと二人が考えれば、その後婚姻に至るというようなものです。

 しかし実は、試用期間と同棲は全く異なります。試用期間をどう考えるかについて労働法の学者は昔からいくつかの考え方を示していました。

① 本採用の通常の労働契約とは別個の予備的な契約

② 適格性判定のための特殊な契約と本契約の予約が併存している契約

③ 当初から労働契約は成立しているが、不適格を理由としてその契約の解約権がある契約

世間では、①や②というイメージがあるように思います。しかし、最高裁判所は、③の既に労働契約は成立しているという立場をとりました。

その結果、本採用を拒否する場合は、通常の解雇の場合ほど厳格ではないものの、「客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認できる場合のみ」拒否できるとされました。つまり、一般人から見て、採用を拒否しても相当だという客観的な理由が必要となりました。弁護士から見ると、試用期間中の能力不足については、よほど明らかな不足がない限り、不採用は認められません。

また一般職、総合職というようなジョブ型ではない採用であれば、配置された部署では力を発揮できなくても、他の部署や他の仕事であれば能力を発揮出来る場合があるので、その適性を試す機会を会社が提供したかも重要な要素となっています。

 「人を大切にする経営」は出会った時から始まっています。ただ業態自体、事業自体が本人と合わない場合はあります。その場合は、早く判断をし、本人が納得をした上で、本人にとってよりよい企業で働く機会を提供することも人を大切にすることだと思います。特に中途採用のような場合は、いきなり試用期間に入るのではなく、インターンシップ制度や短期の有期雇用等を利用して、お互いに一緒に働いていけるかを確認する作業を採用前に置くこともいいのではないかと思います。

 (学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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