公益通報保護法が改正されました
2025年6月4日、改正された公益通報保護法が成立しました。
いくつかの改正がなされていますが、特に重要な点を2点お知らせします。
これまで、公益通報をした後に、社員が懲戒や解雇をされた場合には、社員の側で不当な懲戒処分であるとか、不当解雇であるということを証明しなければなりませんでした。
しかし、改正法が施行された後は、公益通報から1年以内に又は事業者が公益通報を知ってから1年以内に行われた解雇または懲戒処分は、公益通報をしたことを理由としてされたものと推定する旨の規定が設けられました。この結果、1年以内の解雇または懲戒処分が公益通報とは無関係であることを会社側が立証しなければならなくなりました。つまり公益通報とは関係がないことの証拠をきちんと会社側は準備をしなければならないということです。
もう一つは、公益通報を理由として解雇または懲戒処分をした場合には、刑罰が科せられることになりました。行為者個人については6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金、法人には3,000万円以下の罰金が科せられます。
なお、比較的混乱が生じていると思われるのは、公益通報窓口と内部通報窓口の違いです。
公益通報窓口とは、役務提供先の「不正行為」を通報する窓口です。
これに対して、単なる内部通報窓口は、社内のコンプライアンス上の通報窓口です。
昨今、某県知事で問題となったパワー・ハラスメントやセクシャル・ハラスメントは、いずれも犯罪行為若しくは過料対象行為又は最終的に刑罰若しくは過料につながる法令違反行為とされていないため、これらの行為については通報対象事実に含まれず、これらの行為に係る通報は公益通報にはあたりません。もっとも、ハラスメントが暴行・脅迫や不同意わいせつなどの犯罪行為に当たる場合には、公益通報に該当します。
一方で、ハラスメントには内部通報窓口を設置することが、会社には義務づけられています。これは内部通報窓口です。
ハラスメントで訴えた場合、暴行等の刑法違反行為がない場合には公益通報に該当せず、解雇または懲戒処分をしても、公益通報上の刑罰は科せられませんが、解雇または懲戒処分は権利の濫用として無効となることはあります。また損害賠償の義務を負わせられる可能性もあります。
したがって、いずれにしても通報等を理由とした解雇や懲戒処分等は、仮にそれが誹謗中傷目的とみられるような場合であっても、慎重に対応をした方がよいと考えます。
(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)
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