人を大切にする経営のリストラ

リストラとは本来リストラチャリングであり、企業組織や事業内容を再編・整理することを指していますが(人を大切にする経営学用語事典、p196)、本来、リストラクチャリングには解雇の意味は含まれていません。しかし、日本においては、特に高度経済成長後、リストラ=解雇という認識になっていると思います。

 2025年6月23日の日経新聞デジタル版において、大手電機メーカーであるP社について、「デジタル改革も周回遅れ 株主「具体案見えず」」との記事が出ていました。

 その記事の中では、5月にその会社が1万人規模の人員削減を発表したけれども、株価は上がることなく低迷を続けたとのことです。

 そして、同日開かれた株主総会に出席した株主のインタビュー内容には、次のような発言がありました。

「構造改革をやりたい気持ちだけは伝わったが、具体案が見えない。」

「人員削減が市場の評価につながっていない。余剰人員はリスキリングなどで再配置をするべきだ。」

 つまり余剰人員がいても、削減をするのではなく、新たな事業を創出して、そこに再配置をして有効に働いてもらうべきだと発言しているのです。

 人を大切にする経営では、当たり前に言われていることです。前述した用語集のリストラチャリングの項目では、「人を大切にする経営においては、つねに事業の検証を行いながら、時代やニーズを冷静に見据え、自社の今後の方向性を幅広し視野で判断し、再構築していく必要がある。」(同p187)とまとめられています。事業の再構築をする責任は経営者にあります。社員ではありません。この点を経営者は肝に銘じる必要があります。そして限られた人財を有効に活用し、社会に付加価値を提供していくことが大切です。

 前述の新聞記事の表題は、「デジタル改革も周回遅れ」となっていた。この「も」には、当該会社の事業運営そのものの在り方「も」周回遅れになっているとの意味が込められているように思いました。

 (学会 法務部会 常任理事 弁護士 山田勝彦)

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