テラス
野口具秋です。
土曜日の夜、何気なくBSを見ていたら黒澤明監督の「7人の侍」を放映していた。この作品はその後の世界中の映画監督に影響を与えた作品となった。公開されたのは1954年4月、実に55年前。当時観た人の大半はこの世にいないだろうと思う。黒澤明を始め、主演の三船敏郎、志村喬などは既に全員この世にいない。当時9歳であった私は63歳である。
1960年にアメリカでユール・ブリンナー、スティーブ・マックイーン、ジェームス・コバーンらの出演で製作された「荒野の7人」は日本でも大ヒットした。勿論原作は「7人の侍」である。
期限の迫った原稿書きに追いまくられ、最後まで映画を観ることはできず、遅くまで自室のパソコンに向かった。眠りに就く布団の中で、50年前ころを振り返ってみた。東京・杉並を思い出してみた。ともに通った中学校時代の友の顔が浮かんで来た。学校通いの途中の松林の風音が聞こえてくる。帰宅途中に寄り道をした友の家で出してくれたお菓子はなんだったかな。
翌日は風が強く寒い日だった。どうしても寄らなければならないパソコン教室。ほっとして、寄り道したいつものパン屋さん。 サービスで自由にコ―ヒーがテラスで飲めます。いつも賑い大勢が集うテラスです。
今日は誰もいない。強風の中、電線がヒューヒューともなり笛を鳴らしている。強く寒い風でテラスの中は吹き飛ばされてきた木の葉で一杯。温かいコーヒーが今までの緊張を解してくれる。ふと気づいた隣なりの夫婦、2人で睦まじげにパンとコーヒーで肩を寄せ合い、風を避けながら語り合っている。静かな光景である。温かい雰囲気が伝わってくる。歳のころは私より10歳ほど上であろうか。
いつも何かに追いかけられているようで、余裕の持てない私に、こんな静かで平和な時間がどうすれば持てるのだろうか。
土産代わりのパンの袋を手に、ワイフのいる自宅に、風の中へ自転車をこぎだした。
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