小ざさ
1年前
昨日、飛騨市の税理士の福田幸博先生がシェアした、東京都吉祥寺「小ざさ」さん。
法政大学大学院、坂本光司教授が著書で紹介されている。別の日に投稿する。
アップルストアは、1平方フィート当たりの年間売上高で、ティファニーよりもはるかに高いということが報道されました
この記事を見たとき僕の頭に、まてよ、と一つの疑問が浮かびます
「それって、1坪で年間3億円売り上げる『小ざさ』とどっちが上なのだろうか?」
アップルストアの1坪当たりの年間売上商は1530万円
小ざさはその20倍、約3億円
それでは、アップルストアに圧勝する吉祥寺「小ざさ」とは、いったい、どういう存在なのでしょうか
1日150本限定40年間行列が途絶えない「幻の羊麓」
僕も以前「幻の羊羹」を手に入れるために、始発で吉祥寺に向かい、行列に並んだことがあるのですが、これが実に楽しいのです
それはきっと古くはドラクエを買うために並んだ少年たちやディズニーランドのアトラクションに並ぶ女子たちやそれこそ新しいiPhoneを買うためにアップルストアに並んだ大人たちと同じような感覚だろうと思います
手に入れること自体が嬉しく、並ぶこと自体がもはや楽しい
それを支えるのが、小ざさの圧倒的な「ブランド」でしょう
ブランドは、ときに、人に魔法をかけてしまいます
そのとき、手にした整理券は、単なる紙のはずなのに、お札よりも高価なものに感じられました
また、ついに手にした幻の羊羹は、そのかたちからして、金塊のようだと感じました
完全に小ざさブランドの魔法にかけられていたのです
魔法にかけられていたからこそ、始発で行って、寒い中何時間も並んだというのに、辛いよりもむしろ楽しかったのです
ブランドには、まるで麻薬のような効果もあります
それでは、小ざさの「ブランド」とは、いったい、何でしょうか?
小ささの「ブランド」とはマーケティング的な意味でいえば、まずは1日150本「限定」であることの「希少性」がブランドを誘発しています
しかも、小ざさは全国にあるわけではなく、吉祥寺のダイヤ街にあるまさに1坪の店舗でしか買えないのです
ゆえに、全国からお客様が押し寄せます
中には吉祥寺に前泊して並ぶ人もいるそうです
たとえば、それが全国の多くのデパートで売り出されているとしたら、きっと今のようなブランドを保つことができなかっただろうと思います
人気の圧力が弱まってしまうからです
「ここだけでしか買えず、この本数だけしか売っていない」からこそ、人気が出る
この人気の圧力が一定数を超えてくると、おそらく人気に「狂」が混じるようになり、それが圧倒的なブランドにつながるのでしょう
経営的な意味でいえば、ブランドをまとうようになると、「営業」と「広告費」がまったくいらなくなります
行列以上の広告はこの世に存在しないからです
もちろん、限定にしさえすればいいという話ではありません
あ、なんだ、だったら私も明日からうちの商品を限定にしよう、と数量限定にしたとしても、商品の質(クオリティ)がともなわなければ意味をなしません
そして「限定でなければならないストーリー」がそこに存在しなければ、人は「熱狂」的にそれを支持するまでにはいたりません
小ざさには、商品の質とそれにまつわるストーリーがちゃんとある
だからこそ、人は小ざさの羊羹を熱狂的に支持するのです
商品は羊羹と最中の2点のみでは、小ざさは幻の羊羹でいくらもうかっているんだろうか
わかりやすく、小ざさの羊羹を1本600円とします
毎日150本完売して、でも火曜日が定休日だから、年間310日くらいの営業日だとすれば
600円×150本×310日=2790万円
すごい、羊羹だけで年間3000万円くらいの売り上げがあるんですね!
あれ?でもまてよ、年間の売上高は3億円だったはず
そうだとすれば、羊羹の売上高は全体の1割にも満たない
とすると…皆様、気づきましたでしょうか
実は売上高のおよそ9割を羊羹ではなく最中が稼ぎだしているのです
そう、実は最中のほうが圧倒的に売れているのです
最中に関してはインターネット通販でも全国に販売しています
しかも、この効率の良さは、いったい、なんでしょう
羊羹にメインに使うのも餡、そして最中にメインで使うのも餡です
メインの材料を兼用できるのです
商品は2点しかないので、当然、多くの商品を並べている他の和菓子屋さんと比べると、ロスの心配、仕入れ、販売の煩雑さもなく、パッケージも様々作る必要がない
また、羊羹の材料も小豆と砂糖と寒天なので、最商級のものを使ったとしても、原価もそれほど高くはないはずです
経営的な視点からみても、小ざさのモデルは実に無駄がないのです
しかも、2点のみなので、様々なケーキを陳列する洋菓子屋さんのような長大なショーケースも必要ない
1坪の店舗で十分に営業ができるので、家賃も縮小できます
つまり、販管費と原価を少なく抑えることができるビジネスモデルだといえます
小ささを支える「ルール」
皆様、小ざさの行列をご覧ください
白い帽子を被った、メガネをかけたカメラ目線の男性がいることがおわかりでしょうか
じつは、この方こそが、あろうことか、小ざさ代表 稲垣篤子さんのご主人なのです
ご主人が、羊羹を買う列に並んでいるのです
1日150本限定には理由があります
それ以上、あの幻の羊羹を作ることができないからです
大変、貴重なものなので、もちろん、従業員にも融通しませんし、従業員どころか、親族にすら並ばせてしまうのが、小ざさのすごいところです
たとえば、1日150本限定、身内にも並んでもらう、お客様とは一定の距離を保つ、といった厳格なルールが小ざさにはあります
このルールが従業員の規律を生み、そしてお客様の圧倒的な信頼を得る要因の一つになっているのです
そして、ルールを作るのは、いうまでもなく、人です。
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