「業績軸」の資本主義社会の瓦解、その序曲が始まった
かつて坂本先生は、
「“働く”ということの『ものさし』が変わってきているということは否めない事実。この予兆に気づかない、いいかげんな経営者には恐ろしい未来が待っている。」
とご指摘されていました。
それを受け、私は、事務所通信で以下のように捕捉をいたしました。以下、新SVC通信345号から抜粋します。
『景気が回復した時がその時であると当通信では予測します。人本主義の理念経営に成功してくる企業が増えてきて、景気が回復してきた時、労働者の大規模な移動が起きる可能性は極めて高いでしょう。非理念経営の会社から理念経営の会社へ転職が加速されるでしょう。社員満足をおろそかにした非理念経営の会社では、優秀人材は採れず、事態は困窮の度を極めていくことになるでしょう。早ければ数年で遅くとも10年内にはその事態が訪れるに違いありません。』
http://svcnews.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-cf04.html
これを書いたのは2010年7月のことでした。
春うららかな2014年のゴールデンウィークの最中に、以下のような見出しのニュースが新聞の紙面を飾りました。
<人手不足>景気回復で奪い合い 時給1375円も求人難/5月5日毎日新聞
人手不足、企業が悲鳴 営業短縮や店舗の閉鎖/5月2日朝日新聞
飲食店や小売り、建設工事だけでなく、製造業の現場でも人が足りなくなり、企業は働き手を確保するため、バイト代やパート代を引き上げているという内容です。
事例として牛丼の「すき家」(ゼンショー)などが取り上げられていました。
2月から4月にかけて人手不足を理由に123店で休業し、124店が深夜・早朝営業を休止したそうです。
学生アルバイトが大量離職して経営が立ち行かなくなったという事態に陥っているのです。
ゼンショーはこれまでも労働紛争のニュースがたびたび報じられてきており、人の幸せを顧みない経営をしているとみられます。
実際、今も24時間営業を1人スタッフ体制で行うなどといった劣悪な労務管理が実施されています。
そこにもってきて、2月に始めた牛すき鍋定食が牛丼より手間がかかり、負担ばかり増えて人が増えず、『やってられない』と辞める人が相次いだのです。
大切にされていないうえに、売上げを優先する「業績軸」経営を全面に押し出したために、とうとう働くスタッフが反旗を翻したという構図です。
ゼンショーだけでなく他の企業でも同様の事態が起き始めているとニュースでは報じられています。
ワタミもまた人手不足のため1割の60店舗を閉鎖すると発表しました。
店をオープンすれば売上があがっても、働く社員がいなくなっては、開店ができず経営の継続は不可能です。
最悪、労務倒産という事態に追い込まれてしまうでしょう。
これが、坂本教授が激白されていた‘恐ろしい未来’のかたちです。
時期的に早いほうで予言が成就してしまいました。
新聞では、景気回復によって人手不足を招いていると指摘していますが、今、思うように採用が出来ない理由を景気がよくなったから人手不足になっていると思っている経営者は完全に時代を見誤ることになります。
今、人手不足に陥っている企業はいったい誰に去られているのでしょう。
そうです。人を大切にすることに親和性をもった平成世代の若者たちなのです。
決定的な事象がついに起きたのです。
誰の目にもはっきりと「業績軸」の資本主義社会が瓦解し始めているということが認識できるようになってきました。
人手不足ということで賃金を引き上げる対応をしている会社も増えているようです。
実際、時給も上昇し続けていると報じられています。
しかし、給料を高くするだけでは、応募状況や定着率の改善にはつながりません。
平成世代は、いい雰囲気のある職場で働き、より自分が役に立てる環境を強く望みます。
時給の多寡はそれほどインセンティブにならないのです。
⇒平成世代の特徴
人手不足状態を克服するためには、じっくりと腰を据えて「幸せ軸」の人本経営に舵をきること以外にありません。
私の知っている人を大切にする会社では、人手不足に悩んでいる会社は皆無です。
採用人数が思うように行っていないというケースはあるようです。
けれど定着率が抜群に良く離職者がほとんどいないから人手不足にはならないのです。
何度でも言います。
本気で人本経営を実践できるかどうかが、本当に企業の行く末を大きく左右する時代になったのです。
ゼンショーさんも、ワタミさんも今後の信用回復に期待したいですね。
小林さん
おはようございます!
我が社もいち早く、「人を大切にする会社」と言われるように努力して行きたいと思っています。
村田さん、コメントありがとうございます。人本経営で決まりです次世代は。
岩崎さん、コメントありがとうございます。ゼンショーはともかくワタミは出店を減らして、もう一度働きやすさを考えるとしているので、契機によくなっていくことが期待できますね。