黒字経営を半世紀続ける会社
黒字経営を半世紀続ける会社
6月、岐阜県で建築電気設備を製造している未来工業を視察しました。
当社の過去10年間の業績は、世紀の環境変化と言える、リーマンショック時に僅かな停滞があったものの、堅実に推移しています。2009年を除く営業利益率は、7.0%~14.7%と4~5%の上場企業平均と比較して群を抜いています。ちなみに当社は、1965年の創業以来、高い利益率で黒字経営を続けています。この好業績の要因は多々ありますが、ここでは3つご紹介します。
未来工業の特徴(主に山田雅裕社長の談話より)
1.徹底した差別化
創業時、現社長の父である山田昭男氏は、高額(税引き前利益4千万円以上)所得法人を目指しました。当時、高額所得法人は全体の3%未満の希少な存在。ならば、世間の97%の大多数が、常識と捉え、当たり前にやっていることの逆をやらなければ、高額所得法人になれないと考え、「徹底して同業他社と反対のことをやる。」の決意から出発しました。
「他社と同じモノはつくらない。」と、創業以来、徹底的に使いやすさを追求し、随所に創意工夫を盛り込んだオリジナル製品を生み出してきました。
たとえば、電灯などのスイッチの裏側に埋め込まれる「スイッチボックス」。他社製品は2つ穴が標準ですが、当社製は4つ穴、これにより壁に固定する際の作業性や、取り付け時の安定性が格段にアップ。現在では約70%のシェアを獲得しています。
2.常に考える
当社の製品数は約2.万7千点。主力は電気資材、ほか給排水設備やガス管を収納・保護するカバーなど水道やガスの資材。これらの製品は、約3千件の特許、実用新案、意匠登録が取得されています。
これら製品差別化の源泉になっているのが「提案制度」。1件の提案につき500円が無条件に支払われます。年間提案数は、昨年、800人で1万5千件。一人当たりの平均が18件。総費用は約1,500万円。社内は「常に考える」の標語ポスターが至る所に掲示されており、いかなる場所でも必ず視野に入ってくるほど高密度で掲示されています。
3.人間尊重
1)年間休日が約140日
2)定年70歳。給与水準は60歳レベルを維持、65歳時の平均年収は約700万円
3)人財を都合のいいときだけ使う「コスト」扱いはしたくない。だから全員が正社員
4)一日の労働時間は7時間15分。残業もノルマもなし
5)全社員を対象にした海外への社員旅行は5年ごとに実施。前回はイタリアの世界遺産などをめぐった。約2億円の旅費は全額会社が負担
6)育児休暇3年までOK
山田社長は「社員のやる気のない会社は、私は怖い。」と語っていました。当社の高業績を出し続けている根源となる商品の開発や改善、営業現場での細やかな対応が、社員のやる気が源泉となっていることを体験を通じて認識していると感じました。
280万社を超える国内企業の70%が赤字であえぐ中、半世紀にわたり黒字経営を続ける当社の経営は、わが国モノづくり中小企業の今後のあり方を示唆していると言えます。
春木清隆
春木さん
らしい、投稿、改めて学びます。
知野 進一郎