、「会社経営の目的は、会社に関係するすべての人を幸せにすること」
法政大学大学院 坂本 光司ゼミの今年の出版に向けての全体研究は、「経営理念」についてだ。
新入生と言っても64歳の私と同世代の方から「浅野俊光」さんの「日本の近代化と経営理念」、1991年の発行で図書館で見つけてきた本だ。
私はアマゾンで中古で買った。
39歳の若さで病死するが恩師等が論文をまとめて発刊したようだ。
最初のP(3P)に結論が書いてある。
第Ⅰ部 経営理念の理論と現実
第1章 経営理念とは何か
略
経営理念とは一口で言うならば「経営者あるいは企業が経営目的を達成しようとするための活動指針あるいは指導原理である」といえるとある。
坂本光司教授は、「会社経営の目的は、会社に関係するすべての人を幸せにすること」と一貫している。
私の修士論文は、会社と会計事務所との関係ですが、世の中の時代の流れも一つの柱とした。
2章 現代経営学との比較
バブル崩壊後の価値観は、売上至上主義から社員とその家族を大切にする経営へ変わり、同時に幸せを感じる経営へと変わる。
1.ドラッカ-(アメリカ)経営学と坂本経営学との違い
ドラッカーが亡くなる(2005年)1年半前に女性伝記作家のイーダス・ハイム氏を呼んで、何回かのドラッカーの取材と共にGEのジャックウェルチ等も取材し、彼女が1冊の本にまとめ出版している(イ-ダス・ハイム著、上田敦生訳(2007)『P.F.ドラッカ- 理想企業を求めて』ダイヤモンド社。日本のドラッカー研究の第一人者の上田敦生氏にも取材があった。
ハイム氏のまとめも含めて、上田氏はドラッカーのマネジメントには以下の三つの役割があると定義している。
「自らの組織に特有の使命を果たす」「仕事を通じて働く人たちを生かす」「社会の問題について貢献する」である。
法政大学大学院坂本光司教授は、「会社経営の目的は、会社に関係するすべての人を幸せにすること」と定義する。
一方、ドラッカーは「企業の目的は、顧客を創造すること」。この違いは大きい。目的と手段を間違えるケースは日常茶飯事である。
経営者・学者として最も著名なドラッカーは、企業の目的の定義はただひとつ「顧客を創造すること」にある。顧客の創造とは、お客に求められているものを創造すること、、。
ドラッカーは以下のようなことも言っている。
顧客満足(CS)と従業員満足(ES)の二つが両立できてこそ、、。人を大切にすることと、業績をあげることとの間にどんな関係があるか私は分かりません。
そのことは産業心理学者たちが研究すればいい。ただ、そういうことが事実として実際に起こった。それだけで十分ではないかとドラッカーは言う。
2.経営の目的は業績の追求ではなく関係するすべての人々の幸せの創造
坂本教授著(2008-2016 計5冊)『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)、同(2010)『経営者の手帳』(あさ出版)の中で「CS」を飛躍的に高めたいなら、その前に、「ES」を飛躍的に高めるべきである。
CS、つまり顧客満足度を高める経営は、極めて重要である。
事実、CSを重視しない企業、CSの低い企業で安定的な好業績を持続している企業は、この世に存在しない。だからこそ、重要なのはES、つまり社員満足度なのである。
「ESなくしてCSなし」である。社員満足度は顧客満足度に優先するといっても過言ではない。
それは、顧客満足度を高めるのは、社員だからだ。所属する組織や上司への満足度が低い社員、不信感のある社員が、顧客の満足度を高める、価値ある仕事をするわけがないからである。
つまりESが高ければ高いほど、組織への帰属意識や愛社心を高め、結果として組織や上司に貢献しようと努力するからである。
3.利益を追わなくなると企業の業績は高まる
坂本光司教授の近著である『利益を追わなくなると、なぜ、会社は儲かるのか』(ビジネス社2016年12月)の40Pには、成功法則07「会社経営の優先順位をきちんと見極める」の中で、「会社経営の目的は会社に関係するすべての人を幸せにすること」である。
「業績を高める、シェアやランクを高める、あるいはライバル企業に打ち勝つというのは、目的を達成するための手段であって目的ではない」と述べている。
さらに62Pからの成功法則12にも「幸せ軸を主軸にすれば、業績もブレることなく安定して高くなる」とも述べている。
近年の我が国の赤字企業の増大についても『さらば価格競争』(商業界2016年10月)の中で述べている。昨年の10月に出版した商業界の『商業界』12月号の20Pからは坂本教授の巻頭提言にはこんなことが書かれている。価格競争が「三方良し」で成立する前提には2つの背景がある。一つは、社会全体が右肩上がりで、供給が追いつかないほど需要があり、量産・量販効果が期待できる状態であること。もう一つは、アジア諸国に消費者が満足するような商品を開発する力がない場合だ。それなら価格が高くても開発力・技術力のある日本企業は優位に立てる。しかし、この二つの背景はすでに終焉しているとしている。略、そこからの脱却をしなければ、略 安売りの先にあるのは殺し合いのスパイラルである。
戦後の高度成長期からバブル崩壊までは、効果効率を重視するアメリカ型の経営が成り立ったのである。すなわち、社長や上司の態度に反感を持っても給与が上がっていたので、我慢ができ、家庭に戻ってもより良い暮らしができるのでよかったのである。バブル崩壊、リーマンショックと続き、給与は上がるどころか大幅カットや首さえ危ないという経営が今も続いている。
一方、アメリカは今日でも人口が増えて経済が依然として伸び続けているので、ドラッカーの考え方もまだ、通用するのだ。
しかしながら、グ-グルを始め欧米や中国、台湾、ベトナムでも人に優しい会社が現存し、日本的経営と言われた経営手法が世界的に広がりをみせている。
4.マズロ-の欲求6段階説
欲求5段階説で著名なマズロ-は晩年に6段階を残していた。生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求と上がり自己実現欲求の上の自己超越欲求である。つまり、自分を捨てて世のため人のため、利他の追求である。(廣瀬清人・菱沼典子・印東桂子著論文(2009)『マズロ-の基本的欲求の階層図への原点からの新解釈』聖路加看護大学紀要 他)
我が国では、就職ができない人々は社会的欲求を求め、定職に就いている人々は承認欲求を求めているので、最近は表彰する制度を設けている企業が増えているようだ。
自分だけ達成するのではなくチ-ム一体となって目標を達成する方が満足度が高まっているようで、チ-ムワ-クが大切になっていくと思われる。
徳島市の西精工のように従業員満足度から幸せ度を大切にする会社も出てきている。
日本理化学工業の大山康弘会長が「人間の究極の4つの幸せは、人に愛されること、人にほめられること、人の役に立つこと、人に必要とされること」と言っているのでヒントになる。
5.結論
バブル崩壊後の価値観 売上・業績至上主義から社員とその家族を大切にする経営へ変わり、同時に幸せを感じる経営へ移していくことが大切である。
法政大学大学院石山恒貴教授が主張するパラレルキャリア(石山恒貴著(2015)『時間と場所を選ばない パラレルキャリアを始めよう!―「2枚目の名刺」があなたの可能性を広げる 』ダイヤモンド社)に代表されるボランティア的な起業、NPO法人等の起業が進展すると予想される。
ヤフ-では社員の1割が副業を持つという(2017年1月4日朝のNHKニュ-ス)。世の為に貢献したいと考える日本人が増えている。会計事務所も、3年程度は無償で社会起業家を支援して地域に貢献することが求められているのではないだろうか。
上場企業301社への調査では、副業・兼業禁止は73.1%で認めているが届け出または許可制が17.9%、認めて届け出の必要性がないが1.0%で、(日経新聞の2016年1月11日付、日経新聞、日経リサ-チ調査)企業間格差が激しい。
これからの働く主役は、女性、障がい者、高齢者であり、社会保険労務士が活躍する場でもある。先行研究の高木論文にもあるように、人事労務の経営課題を経営者と共に対処していく社会保険労務士が求められている。宮崎市で25年間社会保険労務士として活躍している川越雄一氏の2冊の本は、従業員と経営者が共に人に優しい会社を創っていく際に参考となる。『パ-トさんがグッとくる会社』(2015年 労働調査会『終わった人にさせない会社』(2016年 労働調査会)は好著である。
政府の働き方改革が国民の幸せにつながるようにと願う。
改めて、ドラッカー、顧客満足(CS)と従業員満足(ES)の二つが両立できてこそ、、。人を大切にすることと、業績をあげることとの間にどんな関係があるか私は分かりません。
そのことは産業心理学者たちが研究すればいい。ただ、そういうことが事実として実際に起こった。それだけで十分ではないかとドラッカーは言う。
ドラッカーはESの方が優先すると分かっていたと思う。
産業心理学者たち、お前達が研究しろと言ったのではないかと思う。
2005年に亡くなっている。
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