訃報
野口具秋です。
会社で共に机を並べた同僚がこの世を去った。隣町に住む友であった。
宣告を受けてからわずか1年数か月の短い期間で旅立ってしまった。享年63歳であった。
数か月違いで定年を迎え、同じくもう1人と数か月に1度酒酌み交わし旧交を継続していた。私の今を理解してくれた1人であった。
写真が大好きで月に1度は日本中のお城を探し廻り、摂りだめていた。歴史の好きな私と話が合い、私の勧めや解説で奥さんと車を走らせ、ご満悦のこともあった。いつかは写真集にして記念に残すと常日頃から言っていた。定年2年後、いつもの飲み会の電車の中で頻りに胃の不調を訴えていた。検診の結果、手の施しようがないと宣告されてしまった。術後の苦しい最中に2人で見舞った時、最悪の状況をわれわれに告げ、我々は話すべき言葉を失ってしまった。それから旅立つまで1年4か月であった。
死の事実を知ったのは旅先であった。無事の確認と例会の知らせを電話すると状況が良くないことを告げられた。間もなく短いメールが届いた。これが友との最後の会話になってしまった。死の10日ほど前であった。
5月に集合した時に放射線治療で毛髪が抜け落ちて気にしていた友、帰際に「いい男は、どんな状態でも、いい男はいい男に変わりないゾ!」と見送ったら帽子をはずして帰って行った後ろ姿が最後の対話と姿になった。
野辺送りは様々な事情で父親代わりの甥の結婚式と重なってしまった。最後の友の顔を見ることもなく、車を早朝から結婚式会場に走らせた。新郎新婦の前で挨拶に立った私は、今この時間に友の葬儀が行われていることを参加者全員に伝えた。幸せと不幸せは表裏一体であることを述べ、幸せの継続の大切さを心を込め語りかけました。
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