パナソニック人事抗争史【読書メモ】

本書は岩瀬達哉氏によって、松下電器の元役員・幹部社員へのインタビューと多くの参考文献から著されました。『企業はトップで決まる』と言われるのは、企業の規模に関係ないことが学べました。経営者にとって自社と自分を省みる材料になります。以下本書より。

目次
第1章 カリスマ経営者の遺言
第2章 会長と社長の対立
第3章 かくて人事はねじ曲げられた
第4章 潰されたビジネスプラン
第5章 そして忠臣はいなくなった
第6章 人事はこんなに難しい

文中より
ピーター・ドラッカー「人事において重要なことは、弱みを最小限に抑えることではなく強みを最大限に発揮させることである」(『経営者の条件』)と説いた。

人事の経験則を守るどころか、経営者に求められる能力、識見からではなく、いわば会長の好き嫌いによってトップ人事が発令され、経営が差配されていった、この時期、松下電器の人心は相当に淀んだという。

「鯛は頭から腐ると言いますよね。ドタマが悪いとね、下がしっかり頑張っても、全部腐ってしまう。やっぱり、みんな、松下電器は潰れへんと思うてたんですな。それが判断歪めてきたわけや。驕れる者久しからずですな」

「人が死んで残すものは、物質的なものではない。心である」

「石川工場のトップにおった子が、辞めるというてきましてな。どうするんやと言うたら、家に帰って百姓でもしますって言う。いい加減なこと言うなと言うてる間に、LGの研究所長になっていました。そらね、待遇が全然違うし、権限が違うから、新会社に行くよりはいいということでしょう」

「『何が正しいか』ではなく『誰が正しいか』を重視する」風潮が蔓延し、「人事も『秀でた仕事をする可能性』ではなく、『好きな人間は誰か』『好ましいか』によって決定する」ようになっていたからだ。
「企業というのは、やっぱり、仲良し同士でないとやっていけんというのはあります。それはあるけど、一方で、普遍性のある論理でも動いている。見識を持つ者同士が、喧々諤々議論するから、進むべき道を誤らないでいられるんですね。ところが森下君は、非常に狭い料簡で、反対する奴はダメの烙印を押していった」

イエスマンだけの取締役会

「要するに佐久間さんが失脚した途端、森下君に乗り換えたということですわ。彼は常に上しか見てこなかったし、取り立ててくれる上司には徹底的に媚を売り、逆らわずに仕えてきた。まさに、組織の中で生き延びる術を心得た“プロのサラリーマン”ですよ。これは、森下と共通するところですが、裏を返せば、このような芸当ができたからこそ、彼らはトップの座を手にできたということでしょう」

「当時は、みんな会長の正治さんの顔色ばかりうかがっていましたからね。取締役会は正治会長の独壇場で、会長の提起した主要案件には誰も異議を挟まず、沈黙のまま採決されていく。取締役会での議論らしい議論といえば、毎回、ひとり1万円といわれていた豪華弁当が振る舞われるんですが、そのデザートのメロンについて、今日のは小ぶりだとか、甘いとか論じ合うくらいでした」

プラズマの失敗は、いま振り返れば「人事の失敗」でもあった。

「『若い人に託して自ら身を引こう』という思いで選択された方もたくさんおられると思います。そういう方には本当に感謝していますし申し訳ない気持ちでいっぱいです。残った我々が力を結集し、立派に成長していくことをお約束したいと思います」(『Pana News』2001年11月1日号)

さらに中村は「45歳以上の社員は、私も含めていらない」といった過激な発言のもと、最終的に1万3000人を希望退職させ、不採算部門の整理にも着手した。結果、翌年3月の連結決算では、公約であった「営業利益1000億円」を超える1265億円の黒字を計上している。しかし、残った者たちで「立派に成長していく」という約束は果たされていない。中村の後を継いで7代目社長になった大坪文雄もまた、経営の重点目標のひとつに「人員スリム化」を掲げ、平成24(2012)年3月までに約3万5000人をリストラしているからだ。

私は新卒で入社した会社で、2部上場~1部上場~会社更生法適用(倒産)~再上場を経験しました。会社更生法適用を適用された139社のうち再上場した会社は9社。再上場できた要因は、経営陣の刷新と現場のやる気だと感じています。本書を読んで会社経営の本質を改めて認識しました。

今日一日、皆さまにとりまして、素晴らしい一日になりますように・・・。

春木清隆

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