しんぐるまざーにやさしい加賀屋さん

「弱者にやさいい会社の話」(坂本光司&坂本研究室)に、しんぐるまざー雇用に積極的な事例として、石川県・和倉温泉の旅館・加賀屋さんが取り上げられている。私はこれに惹かれて坂本ゼミに入学した。私のしんぐるまざー支援をここで具体化できると期待したのだ。「加賀屋のこころ」「加賀屋の流儀」(細井勝 著)も読んだ。感動である。

一般的に旅館業の客室係は、お客さまの数によって日給が決まるという、不安定で流動的な給与体系が多いという。しかし、加賀屋は固定給を採用した。「客室係が生命線」との方針からだ。30代の客室係の定着率を上げるため、従業員満足度を高める施策を採った。従業員満足あってこそ顧客満足があるという考え方からだ。

具体的には、近くに4億円を投資して、保育園・学童クラブ付き母子寮8階建てを建設して子供をあずかった。その名も「カンガルーハウス」。安心して仕事に打ち込めた。10年ほど働くと、加賀屋ブランドにより住宅ローンが組める。実際に、そんなロールモデルとなる先輩がいた。全国から意欲のあるしんぐるまざーたちが集まった。客室係の3分の1がしんぐるまざー。

物だけでなく、加賀屋には、社員の心を揺さぶるくらいの、慈愛に満ちた歴代の女将たちがいた。中でも、故人・小田孝さんの卓越した人間力は、加賀屋のおもてなしのDNAと評される。多くのしんぐるまざーは、加賀屋への恩返しとばかりに、日本一強い客室係の女性軍団の一員になろうと決意し、自分を磨き上げて高めていった。そんな母の背中を見て子供もまっとうに育つ。幸せの連鎖である。

あるしんぐるまざーも、子供を守り育てたいという切実な思いでいた。その思いは涙の量だけ強くなった。加賀屋に子供を抱えて面接に来て、即日採用された。母子寮で個室をいただき、夕餉を振舞われ、温泉に浸かるとき、感謝を通り越して、不思議な気持ちになった、という。

不思議な気持ち、、地獄に仏、、天国、神様、、そのような世界ではあるまいか。正社員として衣食住が足り、持ち家ももてるかもしれないというHOPE。ここで幸せになる、そう思いを定めたのではないか。そんな彼女たちから引き出される力が、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で33年間連続総合1位に輝く力につながる。

私も「おもてなし」を、加賀屋さんに見習いたいものだ。まずは来年の春合宿を成功させたい、と思う。

                    

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