拓新産業株式会社さん

 拓新産業株式会社さんが、先日の「第6回日本でいちばん大切にしたい会社大賞 審査委員会特別賞」を受賞されました。たまたま「2015年度 中小企業白書」を読んでいたら、事例として掲載されていました。経営方針にブレがなく、社外からの圧にも屈することなく、一貫性を保持しており、一貫性の大切さを痛感しました。以下に白書を抜粋いたします。

                    

事例2-2-5. 拓新産業株式会社

「会社の全員で作り出す“理想の労務環境”
完全週休二日・有給取得率90%・一人当たり年間残業時間2時間」

 福岡県福岡市の拓新産業株式会社 (従業員75名、資本金4,500万円)は、建設機材のレンタル業を営む企業である。人材の確保が難しい業界において、同社は徹底した働きやすい労務環境(完全週休二日・有給取得率90%・一人当たり年間残業時間2時間等)を整備することで、多くの人材をひきつけ、新卒採用の競争倍率は100倍を超えることもある。

 同社が労務環境の整備に取り組みはじめたのは25年前に遡る。今でこそ人気の高い同社であるが、当時は大学生の新卒採用を試みるも、一人として採用することができなかった。良い人材を確保するためには、少人数で経営を支えるため土日勤務や長時間労働が当たり前であった状況を見直すことで、働きやすい環境を整備することが必要であることを痛感し、徹底した労務環境の改善を始めた。

 まず藤河社長が実施したのが、従業員の休暇取得の推進である。完全週休二日制を掲げ、土日休みを実現した。さらに、有給休暇を計画的に取得することを従業員に推奨した。当初はなかなか休暇の取得が進まなかったが、社長自らが定期的な休暇未取得者の発表をし、休暇取得予定を組んでいない従業員には休暇日を指定することで、4年程度で有給休暇取得を定着させ、現在では従業員の有給取得率が90%となっている。

 休暇取得推進の次に取り組んだのが残業時間の削減であった。初めは水曜日のみをノー残業デーとして設定したが、従業員の間で残業時間を削減する工夫が浸透するにつれて、その範囲を拡大していき、約2年後にはノー残業の仕事スタイルが定着した。今では一人当たりの年間の平均残業時間が2時間となっている。

 こうした労務環境の改善を進めるには、社内改革のみならず、社外への説明責任も伴い、中には、休日に対応できないことを不満に感じ、取引を解消する企業もあった。しかし、企業として目先の売上向上を目指すだけではなく、従業員が気持ちよく働ける労務環境の改善を経営方針として優先した。さらに、社員が休暇を取ることが理由で業務が停滞しないよう、定期的に人事異動を行い、各従業員が複数の業務を担当できる状態を作りだし、休暇の際に他の従業員が代わりに業務を行う体制が整っている。

 一方で、同社では、勤務時間が限定されている中で、企業としての収益性を確保するために、徹底したコスト削減を実施している。自社HP作成、従業員の研修の実施等を社内の人材で賄うとともに、フロアの蛍光灯やエアコンの電源、交際費の管理にはそれぞれ担当を配置し、従業員が主体的にコスト意識を持ち、コスト削減を行う仕組みを構築している。その結果、同社は働きやすい労務環境を提供するだけではなく、同時に高い収益性を確保している。

 同社の藤河社長は、「弊社は事業を拡大するより、従業員が安心して働ける環境を作ることを重視している。労務環境の改善を第一に考え、事業規模は現状を維持しながらも、コスト削減により、収益力を維持する経営を志している。今後も中小企業であり続けるが、一流の中小企業になろうとしている。」と語る。

 働きやすい労働環境とは、必ずしも会社から与えられるものではなく、従業員一人一人が主体的に行動することで実現されるものであることを教えてくれる。

                      
M1 本田 佳世子

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