新刊、あとがき

あしかけ2年かがかりで、法政大学大学院、坂本光司研究室の65名のゼミ生が命がけで書き上げた、ちくま新書の「日本でいちばん社員のやる気が上がる会社-家族も喜ぶ福利厚生100」。

平成パブル崩壊前では、社長や上司から道具として扱われても給与が上がるので我慢してきた。
平成バブル崩壊、リーマンショック、3.11を経て、人を大切にする「幸せ軸」での経営が社員からも経営者からも解決の糸口として見いだしつつある。

本の内容を隔日ベースで紹介する。

坂本教授が執筆した「あとがき」を紹介する。

近年、わが国社会が抱える問題は多々ありますが、中でも大きな問題は「少子高齢化」「慢性的税収不足と借金」「経済活力の低下」そして「大都市圏と地方圏の格差の拡大」等です。

こうした問題を解決しない限り、私たちは負の遺産を子供たちに背負わせることとなり、わが国の未来は暗いと思います。

では、こうした問題を解決する方法はあるのでしょうか。私たちはあると考えます。しかも上述した問題を同時に解決する方法があるのです。

それは、本書で繰り返し述べた「社員とその家族」「仕入先やその家族」「顧客」そして「障がい者等社会的弱者」等、人をとことん大切にする企業を飛躍的に増加させることです。

というのは、いつでもどこでも人を大切にする経営を実践している全国各地の企業を調べてみると、上述した問題を見事に解決していることがわかるからです。
より具体的に言えば、これら企業は

①社員の子供の数が多い
②社員数を維持増加させている
③社員の離職率が低い
④障がい者や高齢者雇用に積極的
⑤黒字経営を持続している
⑥社会貢献に積極的

といった共通の特徴が見いだせるからです。

つまり、社員やその家族をはじめとした人を大切にする、人に優しい企業を全国各地に増加させることができたならば、わが国社会が抱える様々な問題解決が同時にできるのです。そればかりか、世界の国々から尊敬される国家になることができると、私たちは考えています。

なお、本書の執筆は、筆者の研究室に所属する修士課程・博士後期課程などの六五名の社会人大学院生全員と筆者、さらには別の研究テーマで共同研究している東海大学大学院のメンバーらが共同し行いました。

社会人大学院生は、中小企業をはじめとする各種組織の経営者や経営幹部、さらには公認会計士・税理士・社会保険労務士・中小企業診断士・経営コンサルタント、そして議員や公務員など多彩なメンバーです。

社会人大学院生は、平日は一八時三〇分から二一時四〇まで東京や静岡のキャンパスで学び、土曜日は全員が都内市ヶ谷キャンパスに集合し、朝から夕方まで選択した講義の受講はもとより、研究室の全体研究やグループ研究、さらには個人研究を深め、その成果を高めるために通学しているのです。

遠くは九州や四国から通学している学生もいますし、年齢も二〇歳代から七〇歳代まで幅広くいます。海外からの留学生もいます。

こうした社会人大学院生の学ぶ姿勢や生きる姿勢を目の当たりにすると、正直、頭が下がる思いですし、この国もまだ捨てたものではないと実感します。

かなり詳細に全国の中堅企業・中小企業で実施している福利厚生制度を調べたつもりですが、筆者らが知らなかったいい制度が、もっともっとあると思います。ですから読者の方々で、「こんないい制度を実施している企業等があるよ」といった情報があれば、ぜひご一報ください。今回は取り上げることのできなかった事例と共に、次作で取り上げさせていただきと思います。
本書出版のために研究室に設置した編集委員会のメンバー、とりわけ黒崎由行委員長やゼミ執行部の労も大きかったと思います。メンバー各位に心からお礼を申し上げます。

本書執筆のため筆者らが収集した事例は、当初二〇〇を優に超しましたが、一〇〇事例を厳選して紹介しました。
本書は『社員と家族が飛び上がって喜ぶ福利厚生一〇〇例』と大袈裟なタイトルとしましたが、読者の皆様が飛び上がる・上がらないはともかく、今後の福利厚生制度の充実強化のヒントになれば幸いです。

最後になりますが、本書執筆にあたり、事例として取り上げさせていただいた企業の皆様には、大変お世話になりました。この場を借り厚くお礼申し上げます。
また、本書の出版の機会を下さったばかりか、六五名が書いた様々な原稿の加筆修正に尽力くださった筑摩書房の編集担当羽田雅美氏にも、厚くお礼申し上げます。
本書が組織満足度・社員満足度を高めることにより、より良い企業づくりをしたいと考えている経営者をはじめとして企業関係者にとって、少しでもお役に立てることができれば幸せです。

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