震災で学んだ、常連客の応援への感謝~『向瀧』

 福島県会津若松市の東山温泉「向瀧」は、会津藩の指定保養所だった老舗温泉旅館です。1996年、木造建築は、旅館業で初の国の登録有形文化財に指定されました。

 1995年、平田裕一社長は、旅行会社との契約を解除して、自らホームページ制作による顧客とのダイレクトな集客に切り替え、料理に接客と、社員教育にも磨きをかけていきました。これらの経営改革が功を奏して、2011年3月も予約で満室のはずでした。 

 ところが、東北大震災が起き直後からキャンセルの嵐が吹き荒れました。

 開店休業状態が続き、3月20日、社長は社員に向かって、「こんな状況ではついて行けない、という人は申し出てください。苦しいけど、たくさんのお客様の笑顔のために、もう一度、私と一緒に働いてくれる人はついて来てください」と、言いました。途中から涙声になりました。社員からは、「一緒について行きます」「一緒に頑張ります」というメールが続々と来て、結果、社員は一人として辞めませんでした。

 雇用を守るため、夜間の警備も自分でやるようにして、来るかわからないお客のために、黙々と社員たちは、客室を磨き続けました。3月11日から4月11日は、前年比で1割の宿泊客でした。

 3月24日、東北自動車道と磐越自動車道は一般車両が走行できるようになり、ある日、常連のお客様から「今から泊まりに行きます」とメールが届きました。またインターネットで「鯉の甘煮を送ってくれ」「お酒を送ってくれ」と、常連客からの注文が応援メッセージ付きで入るようになりました。

 そのとき、向瀧を誰が支えてくれているのかが、分かりました。常連のお客様と、黙々と客室を磨き上げている社員たちです。一方、集客を代理店に丸投げしていた旅館は、代理店と共にお客様も一緒にどこかへ移って戻りませんでした。
常連のお客様が応援する向瀧のおもてなしを体験したいものだと思います。
M2 本田 佳世子

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