「夕あり朝あり」(三浦綾子著 新潮文庫)【読書メモ】

人を大切にする経営を実践しているクリーニング業といえば、株式会社光生舎(北海道)や有限会社 プラスアルファ(福岡県)が小欄でも紹介されています。三浦綾子著:「夕あり朝あり」は、日本で初めてドライ・クリーニングを開発した白洋舎の創業者、五十嵐健治の生涯を描いたものです。

生後8ヶ月で生母と別れ、16歳で家を出た五十嵐健治は、北海道のタコ部屋暮らし、三越百貨店の宮中係と、波瀾万丈の道を歩みます。人生どん底にあった彼が、キリスト教信仰に目覚め、人の垢を洗うクリーニング業に辿り着き、日本屈指の企業を作る物語です。

さまざまな困難に遭遇した五十嵐氏が、どう考え、どのように対処したか。本書から気になった言葉をご紹介します。

<この、思い立ったら、すぐに行動起こすのが持って生まれた性分で、八十歳を過ぎた今も変わりません。はあ、長所でもありましょうが、短所でもありますな。>

<自分が考えたこと、計画したことは、必ず成ると思ってしまう。いささかの危惧も抱かない、限りなく夢はふくらんでいく、これが私の欠点ですな。>

<私は自分のこの独立の願いが、正しいのか正しくないのかわからずに、悶々としていましてなあ。朝目を覚ましては祈り、夜が更けては祈り、「進むべき道をお示しください」と、神に対してひたすら祈りました。>

<事業を始める際に書き出した基準>
一、日曜日の礼拝、および伝道の妨げとならないもの。
一、三越の営業と抵触せざるもの。
一、三越を得意客として、生涯出入りさせていただけるもの。
一、虚言、駆引きの要らぬもの。
一、人の利益となり、害を及ぼさぬもの。
一、資本のかからぬもの。

<(資金繰りに窮した際)全額は払えなくても、ある店には5分の1、ある店には3分の1、また10分の1と、支払うことはできる。そこで、私たち夫婦二人は、僅かな金を持って、一軒一軒事情を述べて謝って歩いた。その家に入る前には、その家の平安と繁栄を祈り、いかに罵られても感謝できるようにと、神の導きを祈った。>

<え?ドライ・クリーニングの特許ですか?いえいえ、神が与えて下さったこの仕事、使命とは思ったが、自分だけで独占しようなどとは、夢にも思いませんでしたな。>

<人間、順調に事が運ばれている時のほうが、思うようにならぬ時よりも、危険なのですな。思うようにいかぬ時は、謙遜であり得るが、意のままになる時は、自分自身の才や努力を誇って、傲慢になる。神はその傲慢を打ち砕かんとして、あの事件に合わせたのかもしれません。>

<私の願いとしましては、事業の目的を利潤追求第一におかず、先ず社会に奉仕することを旨としたかった。>

心棒が太くなり、エネルギーが湧き出てくる本でした。
今日も皆さまにとって、素晴らしい一日になりますように。

春木清隆

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