エフピコ

昨日、8月7日、朝日新聞の夕刊から。

障がい者雇用にも熱心だ。

■エフピコ 容器開発部ジェネラルマネージャー(57歳)
 食品トレーの開発担当になった10年ほど前、スーパーやコンビニに並ぶ弁当といえば、ごはんを容器の左側に、おかずを右側に詰めるものがほとんどだった。
左右を逆にして、おかずを左側に詰める容器を売り出すと、「中身は同じなのによく売れるようになったログイン前の続き」と注文が殺到。
このヒットを機に、数年後に会社は弁当容器の国内シェアで業界トップクラスに成長した。

 左右を入れ替えることで何が起きたのか。「人間の目は、物体を左上から見始める習性がある。
そこに彩りのあるおかずを入れれば、おいしそうな弁当に見えるんです」。こうした人間の習性に関する理論を駆使して、食品トレーを進化させてきた。

 弁当やすし、総菜や生の食材など、様々な食品を入れる容器の開発を手がけてきた。
毎年20シリーズほどの新商品を生み出している。一つのシリーズには大きさや色に様々なパターンがある。10年余りの間に手がけた容器のパターンは約5千にのぼる。

 どんな容器なら、売り場で顧客が手に取ってくれるのか――。開発を任された当初、その答えを得ようと、スーパーに通っては売り場に丸一日立って、顧客の行動を観察した。
さらに、行動の裏側にある人間の深層心理を理解しようと、仕事の合間を縫って人間工学や色彩学を学んだ。分かったのは「通説通りにならないことは多い」ということだ。

 たとえば、青色は食欲を減退させると言われることが多いが、実際の売り場では青色の模様がついた容器の弁当もよく売れている。
調べると、青色には「塩味」を連想させ、中に詰められた食品の甘みやうまみをより強く感じさせる効果があることがわかった。
こうした色づかいを生かして食品を引き立て、食欲をかき立てる技術で、売れる食品トレーを生み出してきた。

 新機軸のトレーも生み出してきた。すしのトレーの「枠盛(わくもり)」は、中身のすしが転がらないような工夫を施している。
「家に持ち帰っても、すしがきれいに並んでいる」と消費者の評判を集め、店頭で手に取るリピーターを増やしてきた。

 秘密は底につけられた高さ2~8ミリほどの山型の突起。この突起が歯止めになり、すしが転がりにくくなっている。
売り場でのすしの見栄えがよくなるよう、突起の大きさや形にこだわり、何度も試作を繰り返した自信作だ。
記者が10個のすしをのせて斜めに傾けてみたが、すしはピタリと固定され、きれいに並んだままだった。

 時代の移り変わりとともに、求められる容器の性能も変わってきている。
共働き世帯の増加や高齢化で、総菜や弁当を買って家で食べる「中食」の需要が高まる中、いま力を入れるのは電子レンジでの調理に対応した新しい容器の開発だ。
生の魚介類、野菜が入った鍋やスープ向けに、レンジで熱々に温めても表面が熱くならず、素手で持ってもやけどをしない容器をいかに低コストで作れるかに取り組んでいる。
「容器の性能が高まれば、スーパーなどに並ぶ食料品の種類も増えていく。まだまだ挑戦は続きます」(村上晃一)

<プロフィル>
よこやま・かずのり 広島県出身。大阪府立大工学部を卒業後、1985年福山パール紙工(現エフピコ)に入社。社内のシステム設計やマーケティング担当を経て、2006年10月から現職。

◇凄腕のひみつ

■水を使い容積計量
 試作したトレーを持って取引先を訪れるときは、メスシリンダーを携行する。トレーの内容量を量るため、いったんトレーに入れた水を移し替え、水の容積を量るのに使うという。

■「感性工学」も学ぶ
 人間工学を学ぶため、人間の感覚とものづくりについて研究する「日本感性工学会」に入会し、仕事のかたわら、3年ほど勉強に取り組んだ。
脳や心理学に関する専門書を50冊ほど読み込んだり、大学教授など学識者の講演を聞きに行ったり……。こうして深めた見識は、トレーの色使いやボリューム感のある食品の見せ方などに役立っている。

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