東京・青山に志あふれる平均27歳の会社
東京・青山のパラドックス、理念つくり「いい会社」づくり
東京・青山に本社があり、平均年齢27歳の会社を坂本光司教授らと最近、訪問しました。「日本でいちばん大切にしたい会社」を執筆、「人を大切にする経営」学会をリードする坂本教授の「定番」訪問先である障がい者や高齢者など「弱者」が多い会社ではありませんが、坂本教授は「いい会社です」と私たちゼミ生に伝え、その場を後にされました。
訪問先は、企業の理念策定などに取り組む株式会社パラドックス(東京・港区、鈴木猛之代表取締役)です。従業員数は50人程度、アルバイトなどを含めて100人程度。私がレコメンドしました。なぜ私がレコメンドし、坂本教授が「いい会社」だとしたのでしょう。
研究室は現在、経営理念をテーマに研究に取り組んでいます。そうした中、私は宣伝会議「コピーライター養成講座」で同社の田島洋之取締役の話を聞きます。話の中身は、クライアント企業の現場のリアルを取材して「その企業らしさ」を表現する企業理念を策定する真摯な姿勢、そして「いい会社づくり」への志がその中身です。
一見、坂本ゼミらしくない企業を私がレコメンドした理由はこれです。それでは、なぜ坂本教授は「いい会社」としたのでしょうか。坂本教授のコメントを引用しながら推察していきましょう。
同社は2008年のリーマンショック後の厳しい経営環境の中で、経営理念策定支援事業に乗り出しました。第1号はその後、超「就職人気企業」となったホテル・レストラン・ウエディング運営の株式会社Plan Do See(東京・千代田区)でした。
同社はこれまでに100社程度の理念策定を手がけており、その実績一覧表には、坂本教授が「私がよく知っているいい会社が18社はある」と指摘されるように、「いい会社」の目白押しになっていました。
「いい会社にはいい経営理念がある」のか「いい経営理念がいい会社をつくる」のか、はっきりしたことはわかりませんが、理念を策定した会社の売り上げはその後、ほとんどが増えている、そうです。
同社も理念経営を実践しています。それも坂本教授が「私が提唱してきた理念経営のほとんどがある」というような内容です。あまりにもメニューが多いので、ここでは極めて簡単な報告をします。
まずは理念。ビジョン(=実現したい未来)は「志あふれる日本をつくる。」。ミッション(=日々果たすべき使命)は「志の実現に貢献する。」。
同社は「志=独自の社会貢献×成長意欲」「幸せな人生とは志を立ててそれを実現していく人生」、と定義しています。これら理念全体の基礎には「らしさ」を置いています。
理念の浸透で特に興味深いのは「Visions」。社員と業務委託先メンバーが理念に沿った活動をめぐる「日々の学びと気づき」をシェア、理念に基づく「承認スタンプ」を互いに送ることができる仕組み(システム)です。
理念に沿った行動を日々、承認することで、理念を自然に浸透させます。「理念の唱和」など失敗もある中、さまざまな仕組みを開発、実践しているのです。
私自身が特に興味深かったのは、「志あふれる日本をつくる。」ため、志を立て、志を磨くことにフォーカスした成長プログラムに社内外で取り組んでいることです。社員は20代のうちに「経営者と同じ責任感と視野を持つ」ほどの人間に成長するといい、その結果として会社が成長する図式を描いています。
「いい会社」を発掘、世に知らせようという我々にとっても、理念策定により「いい会社」をつくろうと志す若者の集団、会社が東京のど真ん中に存在することは頼もしい限りです。
坂本教授はアクロクエストテクノロジー株式会社(横浜市)と鎌倉投信(鎌倉市)を同社と共通点のある会社として引き合いに出しました。同社への期待の表れでしょう。
「人を大切にする経営」大賞の基準上はまだ問題がありますが、これからますます「いい会社」になり、世の中を良くしていく力になってもらいたいと思います。 研究生/中小企業診断士 神原哲也
写真はパラドックスの新入社員の皆様 大阪などの拠点とも結び、パラドックスの10年先について話し合っていた
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