ケーズホールディングスの加藤相談役。

ケーズホールディングスの加藤相談役。

買収した会社が、みつば、よつばどころかとんでもない会社だった。

トップは逃げたがその社員は守った。

愛媛県の田舎イタリアンの「マルブン」の真鍋社長がシェアしたネット記事。

働き方改革の前から「がんばらない経営」

ケーズHDの加藤修一相談役が語る週40時間勤務の極意
久保 俊介久保 俊介
2018年2月5日(月)
 売り上げを伸ばそうと、社員に向かって「がんばれ」と叱咤激励するのは経営者として当たり前――。こう考える人は多いはずだ。
しかし、ケーズホールディングスの加藤修一相談役は、「がんばらない経営」を掲げて業績を伸ばし、64期連続で増収を達成したこともある。

 競争の激しい家電量販店でなぜ、ノルマなしでも手堅い経営ができるのか。
働き方改革という言葉が普及する前から、残業や休日出勤を減らし、多様な働き方を用意するなど改革を続けてきた先駆者に「がんばらない」の真意を聞いた。

――がんばるのは良いことだというのが一般的な認識だと思いますが、「がんばらない経営」を掲げています。

 がんばるという表現は聞こえがいいですよね。でも、無理なことまで実現しようとするニュアンスが含まれるように私は感じます。

 一時的に業績を伸ばしたいと考えるなら、がんばることはできます。しかし、長く経営を続けていくのであれば限界が来ませんか。

 トップががんばれと指示すると、言われた社員は焦って、あれもこれもやらなければならないと考える。
結局、すべて中途半端に終わって成果が上がらなくなります。これが一番まずい。
それよりも、まず落ち着いて、やるべきことをきっちりやりましょうというのが、「がんばらない」という意味です。

 それに、結果を出そうとしてがんばると、儲かる商品を会社が大量に仕入れてお客さんに強引に売るといった無理が生じる場合があります。
肩の力を抜いて、お客さんが何を欲しがっているかじっくり耳を傾ける。
人気の商品がきちんと店頭にそろっているように目配りする。
こうした基本を徹底するということです。ですから、当社には売り上げや利益の目標はあってもノルマはありません。

面白ければサボらない

――ノルマなどがないのであれば、社員が怠けませんか。
 もちろん怠けていいわけはありません。
基本を徹底しています。
例えば、100人のお客さんが来たら、全員に笑顔で挨拶することはやる気さえあればできますよね。
しかし、100人全員に商品を売るのは不可能です。ここで無理してがんばる必要はない。
挨拶や接客といった基本をきっちりやって、「ケーズっていい店だな」とまず思ってもらうことが大切なんです。
店の印象が良くなれば、その場ですぐ商品を買ってもらえなくても、後日また来て買ってもらえる可能性が高まります。

 無理せず正しいこと(基本)に確実に取り組めば、お客さんから社員は褒められるようになる。
褒められるとうれしいから、仕事が面白くなる。仕事が面白ければサボるわけがありません。自然と結果が出るようになります。

――がんばらない経営という考え方になぜ至ったのでしょうか。

 創業した父(馨名誉会長=当時)は、当初から内定者の家族に自ら挨拶に出向くなど、社員とその家族を大切にしてきました。
私も、その姿勢を引き継ごうと思っていました。

 しかし、社員数が増えて徐々に全員に目配りするのが難しくなった頃に、実はがんばってしまったことがあります。
メーカーが安く譲ってくれた商品を大量に仕入れてお客さんに売ったり、外部研修に参加して「スパルタ式」の人材育成術を導入したりしました。
しかし、良い効果が出ませんでした。業績を伸ばそうという意識が先にありきで経営していたからです。

 そこで、反対にお客さんの満足度を高めるにはどうすればいいのかを改めて考えてみました。
お客さんに笑顔で丁寧に対応するには、社員に楽しくゆとりを持って働いてもらう必要がある。
メーカーにも協力してもらって人気商品の品切れをなくさなければなりません。

 その結果、「社員1番、取引先2番、お客様3番、株主4番」と考えるようになりました。
お客さんのために社員と取引先を大切にすれば、実績は後からついてくる。それが株主のためにもなります。

 父が社員を大切にしてきましたから、この考え方を社内に浸透させるのに大きな抵抗はありませんでした。
しかし、それなりに工夫は必要でした。残業を減らすなど目に見える形で示して納得してもらったのです。

実現する仕組みがなければ社員はついてこない

――社員を大切にするための具体的な仕組みはありますか。

 人事評価は加点主義です。
売上高や利益の達成率といった実績評価のウエートは低くしています。
一方で、お客さんに明るい態度で接しているなど、仕事への基本的な考え方や姿勢を重視しています。

週休2日、週40時間労働を守るのに、多様な勤務シフトを導入している点も大きいと思います。
例えば昼間に家族の見舞いなどの用事があれば、同じ日に朝と夜に分けて働くことができます。

 勤務シフトの種類を増やしておけば、残業や休日出勤を減らしつつ、人員の効率化が図れます。
お客さんが多い時間帯だけ厚めに人員を配置できるからです。

 がんばらない経営と何度も言ったって、実現する仕組みがなければ社員は信じてついてきてくれません。
言行一致が大切ですね。

業績が下がる覚悟を持つ

がんばらない経営を導入するのであれば、注意点はありますか。

 きめ細かい業務分析が重要です。
各社員が1日のうち、どの業務にどの程度時間を割いているかについてのデータを取る。
それが理想的な時間配分とどれくらい乖離しているかを確認すると、どこに無理があるのかが見えてきます。

 その上で、ひずみの原因を突き止めてなくします。
ひずみをなくす過程では、業績が落ちるリスクが大きい。
従来が無理の上に成り立っていた数字なわけですから。一時的な業績の落ち込みを受け入れる覚悟があるのか。それが経営者に求められます。

(この記事は、日経トップリーダー2015年3月号の特集を再構成したものです。当時の加藤相談役の役職は会長兼CEOでした

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