『同一労働同一賃金』とは何か(その1)
『同一労働同一賃金』とは何か(その1)
【日本郵政による正規社員の手当カット】
日本郵政グループが同一労働同一賃金の実現を目指す過程で、
正規社員の一部手当を廃止する旨の発表がありました。
そこで、「同一労働同一賃金」について何回かに分けて考えてみたいと思います。
【同一労働同一賃金とは、どのような考え方か】
同一労働同一賃金とは、ご承知のとおり、
同じ労働(職務)については正規・非正規を問わず、
同一の賃金とするという意味です。
しかし、日本の多くの中小企業は、終身雇用であり、
ベテランの人も新入社員も、同じ職務に就く人には、同じ賃金を支払わなければならないか?
というと、そういうことにはなりません。
【同一労働同一賃金は日本の雇用形態に合わない?】
そもそも、「同一労働同一賃金」はEUの制度から来ています。
EUでは、同一労働同一賃金制度を導入した結果、
正規社員の比率が大幅に上がったことから、
日本でも、この制度を採用すれば正規社員の比率が高まるのではないか、
と導入が検討されました。
この点、EUではジョブ型雇用(職務を指定・明示して雇用する)が
主流であることから、職務毎の規準が作りやすいところがあります。
一方、日本ではメンバーシップ型雇用(雇用した上で、
適正を見極めて職務を決め、またその職務も変更可能である雇用)であり、
給与も多くは、勤続給が中心で、それに能力給を加えている場合が多く、
職務内容による給与規準はあまり定められていません。
そのため、職務内容を基準とする「同一労働同一賃金」の考え方は、
日本の中小企業には、あまり当てはまりません。
【日本の同一労働同一賃金】
そこで、厚労省は同一労働同一賃金のガイドラインにおいて、
同一労働同一賃金の規準は次の3つであると定めました。
(1)職務内容
(2)職業能力
(3)勤続年数
つまり、賃金が同一であるかどうかは、
①同じ職務内容で、
②同じ職業能力を有し、
③同じ勤続年数、
の場合ということになります。
このように同一性を決めるファクターが複雑であると、
その判断規準はブラックボックスの中に入ってしまい、
結局、同一なのか、違うのかが社員や外からは見えづらくなる可能性があります。
そこで、どのような賃金制度にするかが重要になってきます。
(次週金曜日 ~つづく~ 常任理事 弁護士山田勝彦)
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