株式会社サイベックコーポレーション【No31いい会社視察2015/8/31】
(この「元ゼミ生火曜日通信」では先週まで5週続けて学会のご報告でしたが、今週からいままでの投稿に戻ります)
今回は2015年8月に坂本ゼミ夏季合宿先のひとつとしてご訪問した長野県塩尻市にある『株式会社サイベックコーポレーション』さんをご紹介させていただきます。
http://www.syvec.co.jp/
同社は超精密金型の開発・設計・製作及びプレス加工を行っています。
2012年には当時売上高約20億円の時に、28億円を投じて地下に工場を建設するという驚きの“夢工場”を竣工したことで知られています。地上に建設する費用に比べると1.25倍かかりましたが、地熱を利用した空調の初期費用・ランニング費用では大幅にコストダウンできると言います。さらに地下空間は温度湿度の安定化に寄与し、微振動を低減できて地震にも強く、地下空間はものづくりには最適だということです。国内工場を最高水準にすることでモノ作りの最先端を追求していることがわかりますね。
また同社は公的な助成金制度を積極的に活用して企業連携事業を行っています。EVなど新分野へ挑戦することで強みを高めています。
国内ではすでに多くの信頼と実績があり、今では世界を目指した躍進が始まっています。
●概要(訪問時の資料から)
創業 1973年
創業者 平林 健吾(平林 巧造氏の父親・オイルショックの時に29歳で脱サラして創業)
代表 代表取締役 平林 巧造(2009年リーマンショック後に29歳で社長就任)
社員数 74名
平均年齢 36歳
事業 自動車・コンピュータ周辺機器・音響・電動工具・住宅関連部品などの超精密金型の開発・設計・製作及びプレス加工
売上 23億円(海外比率は約17%)
主な売先分野 自動車部品(トヨタグループ)75%、医療部品5%
●4つの時期に分かれる同社の歴史
① 賃加工の時期
創業時はお客様の金型を預かって部品を生産した時代。金型の品質に左右され利益も出にくい構造でした。数年後に金型製造の設備を導入します。
② プレス加工の時期
金型作成できるようになり部品のプレス加工が始まります。さらに一体化加工する技術を開発したことで120円だったある部品は60円、30円とコストダウンを可能にし、メーカーから高い評価を受けます。さらなるコストダウン圧力に対応するために海外企業へ技術供与戦略を図り、同社が海外へ進出することなく部品生産の海外移転を実現します。しかも部品生産量に応じてロイヤリティを得る仕組みにしたことで継続的に安定した収益となり、新たな設備投資に充てることができました。120円だった部品は海外生産によって6円になったと言います。(国内の空洞化を防いだ功績として称賛されるべきことではないでしょうか)
③ 自動車産業への進出の時期
安価に製造できるプレス技術を高め、冷間鍛造順送(CFP)工法を開発。板状の金属をライン上に送りながら、伸ばしたり押したり切ったりして立体的な形状にする一体工法です。従来プレスでは不可能と言われた複雑な形状の部品を製造できるようにしたことでさらに競争力を高め、特にトヨタ系列の部品メーカーで採用が広がりました。
④ 提案型企業を目指して
2000年にVT研究所設立。 *VTとはバーチャルテクノロジー
CFP工法の強みを活かすために積極的に北米やアジアの展示会に参加し情報発信することで、さまざまな具体的ニーズを持つ新規顧客の開拓につながっています。今後は医療部品の増加や海外比率を上げていく計画です。
●特徴的な福利厚生の一部
・入社5年以上の社員は3年取得できる育児休暇(社内の女性チームによって“女性社員が働き続けるため”にできた制度)
・自分の有給休暇を他人に提供できる有給シェアリング(心臓病を患った社員の有給休暇がなくなり多くの社員の自発的な申し出があったことからできた制度)
・スペシャルサンクス賞与(社員の活躍に対して家族に賞与を出す制度)
同社は創業時から“社員が家族”と捉えていたと言います。
現社長は“家庭の延長が会社であってほしい”とお話されました。
いままで多くのいい会社を視察させていただいた中で、人を大切にする経営学会や坂本先生の学びから、社員を家族として捉えることが大切で自然なことに感じていましたが、“家庭の延長が会社”という逆のような考え方をしている会社は初めてでした。とても新鮮に感じたと同時に、当日は親しみやすく社員から頼れる兄のような存在に見えた社長の熱い想いを身近に感じることができました。
***補足***
この投稿では2012/4~2018/3までの6年間法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室で経験した【いい会社視察】・【プロジェクト】・【授業で学んだこと】を中心に、毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(桝谷光洋)
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