株式会社クラロン【No34いい会社視察2017/9/4】
今回は2017年9月に坂本ゼミ夏季合宿としてのご訪問や、東京にお越しいただきお話を伺った福島県にある『株式会社クラロン』さんをご紹介させていただきます。
当時すでに90歳を超えておられた田中須美子会長。その背筋がピンとして、しっかりとした口調でお話され、活力がみなぎるそのたたずまいは、すべての人の模範となり尊敬を超えた存在感がありました。
●概要(訪問時)
創業 1956年
創業者 田中善六(2002年没)
代表 代表取締役会長 田中須美子(創業者の奥様)
所在地 福島県福島市
社員数 134名(女性100名、60歳以上22名、70歳以上3名)
障害者数 36名(重度11名)(最高年齢63歳)(12名の班長のうち5名が障がい者)
障害者雇用率 35.1%(2017年12月末現在)
主な事業 学校体育着、官公庁制服等の企画、製造、販売
販売先 東北6県、新潟、栃木、茨城、埼玉県を中心とした小中学校、高校約1200校、官公庁
取り扱い製品 体操着、水泳着、柔道着、剣道着、体育用品、介護用品、タオル等
*スポーツウエア用品の取り扱いは1964年東京オリンピックの頃から開始
●創業者ご夫婦
創業者は田中善六氏。現会長の夫です。
しかし善六氏は2002年に突然病気で亡くなります。深い悲しみの中、妻の須美子氏は78歳のとき社長に就任されます。
●障がい者雇用の開始は日本理化学工業より早かった
創業1956年。創業時の社員数は7名でしたがすでに3名の障がい者が在籍(障がい者雇用率17%)していたというクラロン社。
日本理化学工業株式会社(神奈川県川崎市)が2名の障がい者を雇用した年は1960年ですからそれよりも4年早いのです。
●厳しい業界の環境
繊維業界において特に縫製業はメーカーの下請け業界で厳しいと言います。
得意先は1200校ありますが、学校の統廃合や人口減の影響で見通しの厳しい環境にあります。
生地の在庫はできるだけ少なくしてはいるものの、常に年間売上金額の1/10に及びます。
学校の指定が変われば生地は不良在庫となってしまうリスクもあります。在庫は生地だけでなく校章やライン、ボタン、ネームプレートも在庫する必要があります。最近では最低発注ロットが大きくなっていて、外部環境は厳しさを増すばかりです。
生産量は年間50万枚、2000枚/日、売上の95%は学校向けで、その他は個人チームなどのプライベート分となっています。
同社では年1回、地域への感謝祭として在庫処分セールを行い格安で提供しています。学校の体操着であっても、最近の高機能な生地は多くの方々が喜んでくれ、朝から行列ができるほど大盛況となっています。
●働きがい・生きがい
田中会長は、“社員にとっては会社にくることが生き甲斐”、と語ってくれました。
同社では毎年年末に無遅刻無欠席の表彰を行っていますが、表彰者は多くが障がい者だそうです。
また、例えば忌引きが5日間あっても2日で出社してくる社員や、風邪をひいても出社してくる社員がいます。会社にくることが家にいるよりも楽しい時間になっている証拠ではないでしょうか。
このエピソードは、西水美恵子氏(元世界銀行副総裁)の著書 『あなたの中のリーダーへ』の一文を思い出します。(火曜日元ゼミ生通信No8;2018年5月29日配信)
“毎朝出勤が待ちきれないほど生き生きと楽しく働ける職場と帰宅や週末が待ちきれないほど幸せな家庭”
クラロンさんでは帰宅が待ち遠しいとは言えないかもしれませんが、働くことが人にとって大切なことであることを認識させてくれます。
●印象的だったお話
田中会長のお話は、全てにおいて学びになります。
“人生は余生ではない、与えられた人生”という言葉も印象的でした。
また当日いただいた資料YELL14号(発行;採用と教育研究所)に書かれていた田中会長と地元の高校生との対話をまとめた文章は個人的にとても印象的でした。
特に田中会長の好きな言葉として、
茶道のおもてなし精神を感じる、“一期一会、一座建立、余情残心”
この一連のお話は、自分なりの勝手な解釈で恐縮ですが、“生と死”、“すべての人々への敬意”、“一瞬と永遠”という時空を超えた普遍な思いを心に刻むことができました。
(詳細のお話に興味のある方は採用と教育研究所;半田真仁所長のブログhttps://ameblo.jp/egaosinji/から探してご覧ください)
縫製業は厳しい状況が続いています。同社がこれからも永続していくことは簡単ではないことを多くの方に知っていただきたいと思います。
***補足***
この投稿では2012/4~2018/3までの6年間法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室で経験した【いい会社視察】・【プロジェクト】・【授業で学んだこと】を中心に、毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(桝谷光洋)
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