日本のファッション業界にイノベーションを起こしたファクトリエ

ファクトリエというファッションブランドを御存知でしょうか。

金曜日に開催された坂本先生が主催されている神田経営者クラブの1月例会のゲスト講師はそのファクトリエを運営するアパレル会社「ライフスタイルアクセント株式会社」
の代表取締役山田 敏夫氏でした。
と言う予定が、さすがファッションブランドだけあって流行に敏感なのか、山田代表が今流行りのインフルエンザに罹ってしまったということで、急きょ代理としてファクトリエの創業時から参画されている「ライフスタイルアクセント株式会社」の小林正樹氏にご講演頂きました。

ファクトリエは、高度な技術を有しているが「赤字」「下請け」「若手不足」「意識の低下」と言う負のスパイラルに陥っている縫製工場を救うために2012年に山田代表が30歳の時に創業された日本のものづくりに拘ったメイドインジャパンのブランドなのです。
カンブリア宮殿をはじめ多くのメディアにも取り上げられているのでご存知の方も多いかと思われます。

ファクトリエのユニークな取り組みとして代表されるのが”工場希望価格”です。従来洋服はメーカーや小売店が価格を決めていたのを縫製工場が販売価格を決め、その中からファクトリエと工場が利益を折半するという今までの常識や大手メーカーではできない仕組みを実現しています。

しかしファクトリエは利益だけでは日本の工場は負のスパイラルから脱却できないと考え、ブランドの証である服に付けるブランドタグに工場名を入れたのです。
それによって工場の人たちも「自分たちが作った服」「売れる服を作りたい」という意識を持つようになり、よりお客様に喜んでもらえる服作りをしようと言う仕事に対する誇りややり甲斐が生まれたと言います。
また工場名が認知されることで、何十年も新卒採用ができなかった工場に、新卒希望者が来るようになったと言います。

まさにファクトリエは日本の工場を救うファクトリーブランドとなり、その結果2012年の創業からわずか数年で年商10億円を超える企業にと発展したのです。

その発展の要因として、小林氏は「業界のリノベーションではなく、仕組みから変えたイノベーションを起こした結果」であり、そしてその事業に懸ける思いや今までの常識を超えた取り組みをより消費者に理解してもらいやすいストーリーにして伝えたことが、その想いに感動した消費者が「ファッション性や経済性ではなく作り手の思いに共感して購入する」と言う今までとは違った服を選ぶ価値基準が生まれたのだと言います。

そのような共感を得てリピータとなった顧客を小林氏は「熱狂的な仲間、同志」であり、そしてそのような熱狂的な仲間、同志となるお客様を作っているのが、同じく創業者の山田代表の思いや考え、そしてファクトリエのものづくりに共感して入社した熱狂的な社員であると言います。
まさにものづくりへの熱狂が連鎖しているのです。

このことからも、やはり企業の強みとは、そこで働く社員がどれだけ自分の会社の理念や商品に共感し誇りに思い、それを「熱狂」と言うところまで昇華できるのかにかかっているのだと感じた。
自社の社員が自腹でも買いたいと思わないような商品を作っていては、いくら価格が安くて販促が上手であったとしても、いずれは社会から受け入れられなくなるのだろう。
小林氏の言う「自腹の壁を超える」と言う意味は、自社の社員をこそが一番大切な顧客でなければならないということを端的に表していると感心した。

講義の冒頭で山田代表の代理で少し恐縮していた小林氏であったが、一番の熱狂的な社員である小林氏から話が伺えてとても良かった思いました。

最後に、坂本先生が講演後にコメントされた言葉がファクトリエの成功の核心をついていました。
「よく今どきの若者はと言われるが、私に言わせれば今どきの老人の方が問題だ。」
既成概念、古い常識にとらわれた今どきの老人ではイノベーションを起こすことはできませんね。
今どきの老人と言われないように歳を重ねたいものです。

中部支部
西森義人

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