株式会社富士メガネ【No45いい会社視察2013/9/10】
今回は2013年3月の「第3回日本でいちばん大切にしたい会社大賞」にて経済産業大臣賞を受賞された『株式会社富士メガネ』さんをご紹介致します。
2013年9月に坂本ゼミ夏季合宿先のひとつとしてご訪問し、大久保取締役にお話を伺いました。
創業者は現代表のお父様である金井武雄氏です。樺太にメガネ店を開業しましたが、戦争の大混乱のため店を手放して北海道へ引き揚げます。次の引揚船は機雷に触れて沈没したといいます。想像を絶する中、札幌で再びメガネ店を開業しました。2代目の昭雄氏は樺太に生まれ2歳で終戦を迎えられています。
そんな同社は今では北海道中心に60店舗を超え関東地方にも7店舗あります。
●概要
創業 1939年(昭和14年)10月
資本金 30,000,000円
代表者 代表取締役会長・社長兼任 金井 昭雄
従業員数 575名(男325名、女250名)2018年11月1日現在
事業内容 眼鏡、サングラス、補聴器、弱視眼鏡、光学機器の販売ならびに加工・修理
店舗 北海道を中心に67店舗。
現在、自己資本比率80%を超えた財務健全性を誇っています。
●認定眼鏡士の重要性
2013年の時点で288名の社員が認定眼鏡士の資格を保有しています。全従業員の約半数になります。取得には5年かかり、さらに3年更新という高いハードルのある資格です。
現在は厚生労働省の資格ですが、同社では顧客への対応品質を客観的に確保でき、眼という人間の大切な機能に影響を与える責任ある資格として、認定眼鏡士を国家資格に格上げすべきと考えています。しかし現状では物販中心の業界においては反対が多数を占めています。
●難民支援ボランティアは阪神淡路大震災の12年も前から
創業者の口癖 “ものがみえることで、人生を助けることができる”
創業45周年の1983年、これまでのご恩返しをしたいという思いから、世界に向けて難民支援の活動を始めました。当時は米ソ冷戦の時代、日本では東京ディズニーランドが開園し、80年代後半のバブル景気に突入していく時期でした。阪神淡路大震災が起こった1995年を“ボランティア”という言葉が一般化し始めた元年とすれば、同社ではその12年も前から世界へ向けたボランティア活動をおこなっているのです。
最新の情報として
過去にこのプロジェクトで海外訪問した社員数189名、ミッション回数36回、寄贈した眼鏡総数は162,958組に上ります。
1983~1993年 タイ 41139組
1994~2007年 ネパール 37931組
1997~2004年 アルメニア 18242組
2005~2018年 アゼルバイジャン 55646組
2016~2018年 イラク 4000組
2017年 バングラディシュ 1000組
それぞれの地域では紛争や迫害の中で難民となった人々が大勢います。その方々には日本では考えられないような目の悪い状態でも治療や眼鏡なしの生活を強いられている状況があり、同社がボランティアを結成してUNHCR(国連難民高等弁務官)職員やNGO、通訳スタッフの協力を受けながら、一人一人に合った眼鏡を作成していくのです。同社では国内の協力会社や多くの社員が携わっているとのことでした。
この活動について同社社長は、“会社を変え、社員を変え、無償の行為への報酬は無限大だった”と、支援活動が何よりも社員を成長させたとしています。会社が先に成長するのではなく、社員の成長があってこそ会社の成長があることを証明しています。
この活動の他、中国残留日本人孤児への眼鏡寄贈活動も来日人数や協力企業が減っていく中、続いています。
●エピソード
ある時、眼鏡を作りに来た顧客に対していつものように丁寧な対応をしたところ、病気の予兆となり得る、左右の血管の違いを見つけたことで、病院の検査をお勧めし、大病の可能性を事前予防できたことがあったそうです。同様な発見は年に数件はあると言います。
目は視力だけではなく、体の健康と密接に関係しています。目の検査では人体で唯一、血管を直接見ることができるため健康状態の観察ができると言います。通常であれば眼鏡を購入さえしてもらえればお店としては良いと考えるところ、同社では丁寧な検査から健康を第一に考え、メガネを今つくることをお勧めしない質の高い対応がなされているのです。
また薬の副作用で目の状態が一時的に変わる場合や、日々の生活において例えば“つまずきやすい”症状は目が原因である場合もあるということです。
同社では薬の勉強も必要と認識されながらも、医者ではないためにアドバイスはできません。しかし認定眼鏡士などの育成からわかるように、知識や気づきのあるスタッフの養成ができていることは制度とともに顧客本位の風土醸成が浸透していることを感じます。
●眼鏡業界
現在業界では価格競争がし烈です。眼鏡ができるまでに仮に10工程あるとすると一部の他社では数工程を省いて、低価格販売を優先する状況があります。
しかし本来は顧客一人一人の目の状態をしっかり把握したうえで適切なアドバイスを行い、正しい眼鏡を提供することが大切なのです。また同社では眼鏡が壊れたときには、最新のレーザー溶接機で修理を行う対応も行っています。(年間実績36000件以上)
●最後に
社長は言います。“我が国において眼鏡販売店は、単に眼鏡フレームやレンズの販売業と一般的に見なされておりますが、国民の視力ケア専門家としての役割を今後さらに広めて行かねばなりません”
同社の使命はこれからも続きます。眼鏡を必要とする人が正しい認識をもつようになれば、同社の在り方への共感は確実に広がっていくでしょう。
***補足***
この投稿では2012/4~2018/3までの6年間法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室で経験した【いい会社視察】・【プロジェクト】・【授業で学んだこと】を中心に、毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(桝谷光洋)
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