ともに働きたくなる人を大切にするいい会社:隂山建設
こういう時期だからこそ、人を大切にする会社を学び直しています。
今回、”隂山建設(総合建設工事会社)”について、(ほんの一部ですが)ご紹介させて頂ければと思います。(”隂山建設”のホームページ:http://www.kageken.jp)
1. “3代目社長の想い” - 寄せられた山のようなご恩への“恩がえし” -
●みなさんに助けられたご恩に報いていくことが私の使命
31歳の若さで社長になった3代目は、新たな取り組みをいろいろ始めますが、リーマンショックの影響で倒産の危機に瀕してしまいます。大手銀行の貸しはがしにも会い万事窮すの時に、社長のひたむきな生きざまが人の心を動かし、たくさんの人たちが隂山建設”を支えたことで危機を乗り越えることができました。「私の知らないところで、たくさんの人たちが“隂山建設”のために動いてくださり助けて頂きました。私は、一生かけて、この山のように頂いたご恩に報いようと決意したのです。」
2. “社風”を伝えるエピソード - 思いやりのくり返しがほんわかとした空気感をつくる -
“隂山建設”の社風が分かる“3つのエピソード”をお伝えしたいと思います。
●“献血”の隂山、“災害”の隂山
“隂山建設”本社前には、広大な駐車場があります。いつもはガラガラですが、毎年1回開催される“献血活動”のために広くしています。この日は、福島県の全ての献血車が“隂山建設の駐車場”に集まり、約1,000坪の駐車場が1,200人以上の献血者で埋め尽くされるそうです。当日は、イベントを開催したり、献血者全員に食事をふるまったり、準備も含め3日間会社を休んで社員総出で取り組んでいます。「献血活動は、“血液型が合わなくて亡くなる方がいっぱいいる”ことを悲しんだ創業者が始めました。今では、この地域の一大イベントになっていますが、こういうかたちで地域に恩がえしができて嬉しく思います。」
ここ数年、自然災害が多発しています。地震や洪水などが起こるたびに、“隂山建設の建設プロ集団”が、いの一番で復興支援に駆けつけます。熊本地震の際には、社員が1年以上も熊本に滞在し、建物の復旧工事の手伝いをしたそうです。社員わずか46名の会社ですから、1人でも戦力から抜けると全体に及ぼす影響は少なくないでしょう。「微力ながら、復興の手助けができれば嬉しいのです。住民が安心して暮らせるようになるなら、何度でも被災地を訪れたい。」
●家族の面倒は俺がみるから安心しろ
前途有望な“隂山建設”の社員が、34歳の若さで急死しました。未だ若い奥さんと幼い2人の子供がいる社員でした。“隂山建設”には“育英制度”があり、遺児には22歳まで学費支援をしているのですが、社長は「葬式のとき、2人のこどもは私の養子にしようと勝手に心に決めたんです。“家族の面倒は俺がみるから安心しろ”と、心の中でつぶやいていました。」
社長の考えのようにはなりませんでしたが、生活支援になればと、奥さんに自社への就職を強く勧めました。しかし、精神的に弱っていた奥さんは“できそうな仕事はありません。お気持ちだけで充分です”と帰ろうとしました。
「それなら、私の秘書をしてください。名刺の整理など、してもらえることはいろいろあります。」専属の秘書を置く必要もない社員50名足らずの会社ですが、社長は奥さんのために仕事をつくってあげたのです。
●足腰が立たなくなっても、会社にいてほしい
“隂山建設”には、定年というものがありません。本人の希望があれば、全員60歳を過ぎても働けます。限られた時間しか働けなくても、パートや嘱託の身分はなく、全員が正社員です。「足腰が弱くなったら、タクシーで通勤してもいい。本人が会社にいたいなら、いつまでもいていい。ただそこにいてくれるだけでいいんです。」
3. “私が感じていること” - 苦しみを味わったからこそ優しくなれる -
●苦しみを味わったからこそ、優しくなれる
“隂山建設”が倒産の危機のとき、地元経済誌に「バカ息子がたった1年で会社をつぶす」との記事が掲載されました。弱っていた社長の胸にグサリと刺さり、ろくに眠れない夜が続きました。気づくと、書類の裏に遺言を書きなぐっていたこともあったそうです。それほど追いつめられた心境だったからこそ、多くの人の優しさがなおさら身に染みたのだと思います。“隂山建設”を、本当に優しさのあふれる会社にされました。
私事ですが、リストラで会社の仲間が何人も会社を去ったことがありました。「なぜ彼らが会社を辞めなければならないのか。」私が全く納得ができず、心の整理もできぬまま苦しんでいた時期に、私を救ってくれた元上司がいました。
その元上司は苦労人で、工場長になった際に、大きな事故で部下を2人亡くした経験がありました。「私は、亡くなられた社員とその家族のことを今後も背負って生きていく。」その日から、今まで以上にすべての部下の様子を観察し、心と体の健康状態を伺うようになったそうです。それが、元上司の生き様でした。
そんな人だからこそ、私の様子を噂で聞き“手を差し伸べてくれた”のだと考えています。
”隂山建設”は、協力会社にも優しく大切にしています。協力会社への支払いはすべて現金払いにしており、協力会社社員を無料で食事会に招待する”感謝の集い”なども開催しています。
このように、すべての人に優しい会社の社員たちは、目つき、顔つき、表情も本当にやわらかく、いつまでも居たくなるような居心地のいい空気感を持った会社となっています。こういう会社が増えて、みんなとともに働ければ本当に幸せだと私は心から思います。
人を大切にする経営学会_人財塾2期生(合同会社VIVAMUS)中村敏治
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