同一労働同一賃金(夏期休暇、冬期休暇の待遇差)

10月15日木曜日に同一労働同一賃金に関する3つの判決が出されました。今回は、夏期休暇、冬期休暇に関する日本郵便における正社員と時給制契約社員との待遇差についてです。

結論は、すでにご承知のとおり、夏期休暇、冬期休暇の待遇格差は不合理であると判断されました。

この判決では、どんな検討がなされたのでしょうか。

▼正社員と期間雇用社員の違い

 前回も書きましたように、一連の同一労働同一賃金に関する判決は、事例判決といってよく、それぞれ個別事案ごとに判断されることとなっています。

 日本郵便では、正社員は、1日原則8時間、4週間について1週平均40時間の勤務となっており、有期雇用社員はいくつかの区分がありますが、時給制で給与が支給され、契約期間は6カ月以内で、契約更新があり、1日8時間以内、4週間について1週平均40時間以内とされています。

正社員は配置転換や職種転換を命じられることがあり、多様な業務に従事し、一定の割合で役職者になるものがいます。時給制契約社員は、人事異動はなく、昇任や昇給はありません。

▼夏期休暇、冬期休暇

 正社員に対しては、6月1日から9月30日までの間に3日の夏期休暇、10月1日から翌3月31日までの間に3日の冬期休暇が付与されていました。これに対して、時給制契約社員には夏期・冬期休暇が与えられていませんでした。

▼判断の決め手はなにか?

 この待遇差が不合理であると判断された理由となったのは、次の点です。

 これらの休暇は、年次有給休暇や病気休暇とは別に、労働から離れる機会を与えることにより、心身の回復を図るという目的によるものでした。

 また、正社員が夏期冬期休暇を取得できるかどうか、何日取得できるかは、正社員の勤続年数に関係なく固定的に定まっていました。

 これに対して、時給制契約社員も、特に繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく、業務の繁閉に関係なく勤務することとなっており、この点で何ら正社員とは異ならないことから、時給制契約社員と正社員との間で、夏期休暇3日、冬期休暇3日を取得できることに待遇差を設けることは不合理と判断されました。

 この判決をみると、たとえば、時給制契約社員の勤務が6カ月以内と短く、しかも繁忙期に限定されて雇用されているような場合(年末年始など)、また正社員の夏期冬期休暇も、勤続年数によって差を設けている場合には、この判決の範囲内といえず、今後の更なる判断が待たれるところとなります。

▼結論

 給与に関わる賞与、退職金以外の手当や特別休暇等については、形式的一律に正社員に付与されているものは、原則として有期雇用社員にも付与されるべきであり、一方で手当や特別休暇等についても正社員の中で勤続年数等により待遇に差があるような場合については、現段階で裁判所の判断は出ていないこととなります。

 いずれにしましても、有期雇用社員が正社員と同様の働き方をしていれば、同じ手当、休暇を取得できるようにすべきであり、仮に正社員の中で手当や休暇の内容に差がある場合であっても、有期雇用社員に対して正社員に対する処遇の最低限の手当や休暇を付けるようにしていく方がいいのではないかと思います。

(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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